商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | みすず書房 |
発売年月日 | 2011/08/22 |
JAN | 9784622080916 |
- 書籍
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チェスの話 ツヴァイク短篇選
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チェスの話 ツヴァイク短篇選
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商品レビュー
4.5
19件のお客様レビュー
4つの秀逸な短編からなる一冊。 「目に見えないコレクション」(1924年) :第一次世界大戦後のドイツのハイパーインフレをこう描くか!圧倒的な敗北感。清々しい。 「チェスの話」(1941年) :ナチスによる迫害の、歪んだ、そして、恐怖さえ感じさせる帰結。すばらしい。
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表題作の映画を観て、原作もと思い読む。どの話もハッピーエンドではないのだけど、後味があたたかい。あとタイトルの付け方が秀逸。他の作品も読んでみたい。
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- 全体主義の波の中で居場所を失っていく人たちの寓話 映画化された「チェスの話」目当てで図書館で借りたけど1ページ目から魅了されてしまう。これほどの読書体験は本当に久しぶり。内容の素晴らしさが美しい翻訳のトーンでさらに鮮やかに引き立つ。 小説の素晴らしさって「答えを読者に委ね...
- 全体主義の波の中で居場所を失っていく人たちの寓話 映画化された「チェスの話」目当てで図書館で借りたけど1ページ目から魅了されてしまう。これほどの読書体験は本当に久しぶり。内容の素晴らしさが美しい翻訳のトーンでさらに鮮やかに引き立つ。 小説の素晴らしさって「答えを読者に委ねる」事だと思う。正解も解説もない。混沌を混沌のまま読者の前に提示してくれる。映画はより「正解に導こうと」する。音楽と読書はまだ脳に自由を与えてくれる。 短編の舞台は1922年から1941年ごろにかけて。一次大戦の混乱からナチスが台頭しはじめる時代のオーストリア、ドイツの物語。 映画「ニューシネマ・パラダイス」では、主人公トトが育った小さな街に個性的な隣人が何人も登場する。映画のキスシーンを検閲する神父、いつも独り言をブツブツ言っている正体不明の男。劇中では大人になったトトが故郷に帰ると、そこには相変わらず「普段何をしているのか分からないおじさん達」がいてトトは懐かしい気持ちになる。 この短編集に登場する人々はそういった人々。普段なにをしているのかよく分からないけど、それぞれが独得の方法で生計を立てている。そして、戦争や全体主義の波の中で、そういったひとたちがひとりまたひとりと消えていく物語。 「どうやって生計立てているのかよく分からないひとたち」が多い社会って、真の意味で豊かな社会なのかもしれない。生き方の選択肢がそれだけ多く、どのような形でも自立した人間として生きていけるから。 しかし、敗戦から全体主義に向かう社会の中では、個人よりも国全体に重きが置かれ、考え方も行動も画一化が求められる。日本の学校が個性を恐れ校則という鋳型に頼るのは象徴的だ。 不思議な事に、全体主義から排除される人々は「ただひとつの観念に凝り固まってしまったひとたち」である。モノマニア、職人、オタク、いろんな呼び方があるが「ひとつのものに特化して全てを捧げたひとたち」 後書きでのツヴァイクの言葉 > あらゆる種類のモノマニア的な、ただひとつの観念に凝り固まってしまった人間は、これまでずっと私の興味をそそってきた。人間は限定されればされるほど一方では無限のものに近づくからである。 > 社会全体を規格化し単一の目的に特化させようとする全体主義が、ひとつの観念に特化したオタク達を恐れ、排除していくのは皮肉な事だ。なぜなら全体主義の指導者達にとって、国民の神は国家でありイデオロギーでなくては困るからだ。オタク達のように自分にとっての「至高の尊い推し」がある個人は不都合なのだ。 「モニマニア」と聞いて思い浮かべるのは自転車ロードレースのプロ選手達。全てのアスリートはモニマニアと言えるが、特にロードーレスの選手は究極だと言える。サドルの上で過ごす時間は現役時代のほぼ全て。あれほどの身体能力があれば、もっと金回りの良い競技に転向すれば良いのに彼ら彼女らはこの競技を続ける。この競技でドーピングが蔓延していた事実に対して様々な解釈がなされているが、カネとか名誉とかはどうも納得出来ない。チェスの話のB博士のように自分の中の「至高の存在」に囁かれるのではないか? それは道徳や損得を超えたメフィスト・フェレス。 秩序がなければ社会は崩壊するが、すべてのメフィストが駆逐された社会も地獄である。 「多様性がある社会」とは、与えられた静的なユートピアなどではなく、秩序を守りたい天兵達と個人の心に眠るメフィストの地獄の業火のせめぎ合いなのではないか? 平和と同じように。 ツヴァイクはファシズムが忍び寄るオーストリアから逃れ、渡航先のブラジルで自殺したそうだ。 彼もまた全体主義からこぼれ落ちたモノマニアのひとりだった。
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