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お目出たき人/世間知らず 岩波文庫
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 岩波書店 |
発売年月日 | 1988/04/01 |
JAN | 9784003105016 |
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お目出たき人/世間知らず
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お目出たき人/世間知らず
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「白樺」創刊の中心人物武者小路実篤の初期の代表作。 武者小路実篤は白樺派の思想的中心人物です。 「白樺」、及び白樺派は、日本文学史を語る上で重要なポジションにある明治後期のムーブメントで、この思想活動により多くの素晴らしい文学・芸術が世に生まれました。 ただ、中心となる思想は、私...
「白樺」創刊の中心人物武者小路実篤の初期の代表作。 武者小路実篤は白樺派の思想的中心人物です。 「白樺」、及び白樺派は、日本文学史を語る上で重要なポジションにある明治後期のムーブメントで、この思想活動により多くの素晴らしい文学・芸術が世に生まれました。 ただ、中心となる思想は、私的には胡乱で骨子が伴わない、ぼんやりしたものと感じています。 「白樺」は同窓の学生、顔見知りが出費して作ったもので、ある程度裕福な学生が集まって作られました。 思想の中心は武士道や軍国主義への反発であったり、芸術への憧れであったりで、若者達が理想を持ち寄ってできたその結果自体が思想であり、若者特有の自己主張と自己肯定感が強い傾向にあるように思っています。 そういった運動の真っ只中でその中心人物である武者小路実篤によって書かれた作品が本書収録の2作品、25歳で執筆した"お目出たき人"と、27歳で執筆した"世間知らず"です。 なお、"お目出たき人"の主人公「自分」が執筆したという設定で書かれた武者小路実篤の短編作品がいくつかあるのですが、本書には収録されていないです。 "お目出たき人"と"世間知らず"は独立した別作品となります。 ・お目出たき人 … タイトルの通り"お目出たい人"が主役です。 主人公は、とにかく女に飢えた若者で、近所に住んでいる鶴という娘に目をつけ、何度か求婚を繰り返します。 「鶴こそ自分にふさわしい女である」とか、「鶴が自分のことを気に入っていなかったらどうしよう」とか、自分勝手な妄想を繰り返すのですが、ある日、偶然鶴に出会い、その出会いから鶴はついに自分と結婚するのだと舞い上がります。 その暴走の挙げ句これかよというラストでした。 理想主義と呼ばれる実篤の初期にして代表作で、理想をぶち壊すような内容になっているのが皮肉ですね。 なお、ラスト近辺でようやく主人公と鶴は邂逅するのですが、作中では驚くほど鶴が出てきません。 お目出たい人の妄想が止まらないだけの作品で、主人公が危なすぎて共感ができませんでした。 正直、おすすめできないですが、後年、友情を書く実篤の原点を知るためにはいい作品だと思います。 ・世間知らず … 器量の良くない、少し妙なところのある女(C子)と懇意になった主人公(A)が、文通や逢瀬を重ねる内に徐々に親密になる。 C子は今で言う所謂"ふしぎちゃん"で、作中手紙の文面が出てくるのですが、現代社会に生きる私が見てもずれているということがわかるような、有り体に言えば変な書きっぷりになっています。 最初はその文面や、無礼とも取れる振る舞いに苛ついて興奮のままに手紙を出すAですが、直にC子が愛おしく思えてくる心変わりが興味深い作品でした。 当時の自然な男女の成り行きを描いた、ドラマティックではないありふれた男女の経緯が描かれた作品なのかなと思います。 それなりのドラマがあり、ラストも、カタルシスであったりどんでん返しの待ち受けていない、普通に落ち着くべきところに落ち着く終わり方となっています。 AはC子に対し、第一印象で"変な非常に不愉快を感じた"とあり、にもかかわらず序盤で二人は肉体的な繋がりを持ち、接吻を繰り返します。 そういった小説は得てして碌な終わり方をしないものですが、本作はそのまま終わります。 この点が非常に拍子抜けでした。 武者小路実篤は何を書きたかったのか、私的には、この頃の実篤にストーリーを展開する能力がなく、盛り上がりのないまま"終わらせてしまった"のではないかとすら感じました。 有名作というわけでもないので、ただ、"お目出たき人"と同じ初期に書かれたということで収録されていると思われます。
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