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祭りの海峡
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祭りの海峡

橋本康介(著者)

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祭りの海峡

1,980

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 地方小出版流通センター
発売年月日 2006/09/01
JAN 9784939042195

祭りの海峡

¥1,980

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2021/10/27
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祭りの海峡 著者:橋本康介 発行:2006年9月22日 アットワークス 昔の知り合いが書いた小説の、2冊目。前回(4日前)読んだ「祭りの笛」は大阪市の図書館になかったが、こちらはある。図書館サイトの書評にも、評価するコメントが書かれていた。図書館で借りてもいいが、ブックオフで見つかったので購入。 「祭りの笛」よりはずっとよかった。じんわりと心に響くものがあった。ただ、やっぱり私小説的すぎて伝わらない部分も多い。私小説的というより、私的な文体、思考の言辞とでもいうか。著者本人とも重なる主人公は、団塊の世代。そして、全共闘運動。その影響下にあって、文体に隠喩や風諭など「イメージさせる」工夫が少なく、言論的な表現が多すぎて、逆に伝わらないのかもしれない。 プロローグとエピローグをのぞくと、4章立てになっているが、最も長い3章は主人公・嶋丈一郎が20歳ぐらいの時に札幌のパチンコ店で働いた数ヶ月の話だけど、この章はグッときた。とてもよかった。パチンコ店はいろんな事情を抱えた人たちが働いている。共通項はお金がないこと。数万円単位だが、店に借金をしている(1960年代の数万円)。そして、ある日ドロンしてしまう従業員も少なくない。そうした事情を抱えながら、どろどろしてはいるが、みんな寮に住んでなんとか、あるいは必死に生きている姿。とてもよかった。ただし、この章のタイトル「玉場のジョー」はあまりに臭い。よど号ハイジャク犯人が犯行声明の中で「俺たちは『明日のジョー』である」と書いていたのが思い出される。玉場とは、パチンコ台の裏側で大量の玉の出し入れなどをする仕事。新入りたちがやらされるしんどい所らしい。 主人公は団塊の世代の男・嶋丈一郎。高校時代は学校を抜け出して映画を観たり(ただ観)、喧嘩をしたり、酒を飲んだり。その友達の森山高志。2人は高校時代から学生運度のまねごとのようなことをし、後に同じ大学で全共闘や映画研究会で反権力側となる。映研メンバーだった山本美枝子は、この小説の前半の主人公。娘は亜希。母親は憲子。憲子は在日朝鮮人と結婚して美枝子を拵える。夫の兄が朝鮮半島から密入国してきた。暫くいたが、消える。詩人だったのではないか。 嶋丈一郎が大学に入る前に働いていたところの一つ、札幌のパチンコ店。職場を取り仕切るマネージャーの新山(在日朝鮮人)の行動は登場人物の中でももっともかっこいい。彼は母国語ではなく、日本語で詩を書いている。そして、その師匠もいる。嶋も一度だけ会ったことがあった。 中年になった嶋丈一郎は、美枝子の娘である亜希から、自分の祖父にあたる在日朝鮮人の兄という人を探して欲しいと頼まれる。手がかりは札幌からの手紙だった。丈一郎は、もしかして新山の詩の師匠がその人ではないかと考え、再び札幌の地へ行く。 若い時、新山に言われた。お前には越えられる海峡がある。だから越えろと。新山は一生懸命に日本語で詩を書いている。越えられない海峡かもしれないが。 海峡は、津軽海峡でもあり、高槻にある三川合流地点(丈一郎と亜希が初めて会った場所)でもあり、また、日本と朝鮮半島であり、全共闘を引きずる自分と今の自分でもある。そんな心情が見えてくる小説だった。

Posted by ブクログ

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