商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 集英社 |
発売年月日 | 2011/02/22 |
JAN | 9784087205787 |
- 書籍
- 新書
鯨人
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鯨人
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インドネシアの多島諸島の最東端、レンバタ島の農作物も出来ない入り江に約2000人ほどの漁村がある。写真家の石川梵さんは92年から今までずっとその村ラマレラの伝統捕鯨に魅せられ、取材を続けて来た。1997年に写真集「海人」、2011年にその取材過程を記した本書、2021年には「くじ...
インドネシアの多島諸島の最東端、レンバタ島の農作物も出来ない入り江に約2000人ほどの漁村がある。写真家の石川梵さんは92年から今までずっとその村ラマレラの伝統捕鯨に魅せられ、取材を続けて来た。1997年に写真集「海人」、2011年にその取材過程を記した本書、2021年には「くじらびと」というドキュメンタリー映画までつくった。確かにホンモノだけが見せる魅力が、本書には随所に散りばめられている。 私はどうしても、ラマレラ捕鯨に古代日本の捕鯨を想像しながら読んでしまう。万葉集にある「いさなとり」は捕鯨という意味であるが、実は日本でも縄文時代から鯨を食べていた証拠が諸所に残っている。私は韓国の蔚山で組織的捕鯨を記録した壮大な壁画(新石器時代)を見たことがある。ラマレラは、手造りの帆掛船で鯨を追い、銛1本を投てきするのではなく自ら飛び込んで突くというもっとも原始的な方法だった。当然海に落とされるが、直ぐに船に戻ってまた銛を突き、最後は包丁で滅多刺しにして絶命させる。一瞬の油断が命取りだ。それを可能にする村の民俗は、私の想像を超えていた。 村のインフラは極めて素朴。水道もなければガスもない。調理には薪の火、鯨の脂でランプを灯す、塩田を作って塩を確保していた。表紙の写真を見ればわかるが、銛持ちは極めて大柄で筋肉質、彼らの主食は白米にとうもろこしを混ぜたご飯。鯨を獲ることに成功すれば、関わった舟全てに鯨肉が分配される。一頭の鯨で家族を二ヶ月賄うことができると言われる。命をかけた捕鯨だからこそ、共同体の怪我人老人含めての福祉補完システムはキチンと完備されていた。女たちもとれた鯨肉は、直ぐに売ったり干し肉にして後で売ったりして、食料や金に交換経済で換えてゆき、男たちの人生を支えている。 やはり銛撃ちが少年の1番の憧れであるとか、船や漁具の作製、祈りも、そうだろうな、というひとつひとつ説得力があった。もちろん、古代と多くの部分で違うが、想像できる部分は沢山あった。 だからこそ、縄文、弥生前期にかけての、鉄器が普及していない時代の捕鯨が何処までラマレラ式なのか、疑問がむくむくと湧いてくる。石器の銛で果たして脂肪30センチのマッコウクジラを仕留めることができるのか?そもそもそんな大きな銛は、遺物で展示されていたことがあったけ?入り江に迷い込んだ鯨をたまたま仕留めただけではないのか?鯨は古代人の人生では忘れることのできない大事件だった。だからこそ壁画に描かれたのかも知れない。しかし、日本の絵画土器には(おそらく)ひとつも登場していない(サメの絵は多い)。宿題がまたひとつ出来た。 その他興味深い処のメモ ・マンタとはオニイトマキエイ(5メートルほどの体長)。年間10頭の鯨に対し、マンタは100頭ほどとれている。この漁の発展形が捕鯨だったのかも知れない。 ・イルカよりもシャチやサメの方がよっぽど獲るのは楽。 ・一番の銛撃ちは、一撃で鯨を突き殺した者。 ・櫂を漕ぐ時の歌に「象牙を生やした水牛よ、どうか私たちを村へ連れていっておくれ」というのがある。古代から鯨が牛や馬などと同じ仲間であることを知っていた。 ・1番銛には心臓が分け与えられる。香辛料代わりのタマリンドという臭い消しを入れ、煮込み料理にしていた。鯨肉丼は案外美味しいらしい。 NO Book & NO Coffee NO LIFEさんの鯨月間レビューで、こんなノンフィクションがあるんだ、と知りました。ありがとうございます♪
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『〝クジラ〟強調月間始めました!』10 第10回は、石川梵さんの『鯨人』です。 インドネシア・ラマレラ村では、銛一本での伝統捕鯨が行われており、写真家の著者が7年にわたり取材した、渾身のノンフィクションです。2011年の作品ですが、10年後の2021年に著者自身が監督で映...
『〝クジラ〟強調月間始めました!』10 第10回は、石川梵さんの『鯨人』です。 インドネシア・ラマレラ村では、銛一本での伝統捕鯨が行われており、写真家の著者が7年にわたり取材した、渾身のノンフィクションです。2011年の作品ですが、10年後の2021年に著者自身が監督で映像化し、映画『くじらびと』が公開されています。 誇り高き鯨人たち、村の営みに深く根ざす捕鯨文化が、実によく活写されています。 それは多分、鯨人たちの古くからの慣習や文化、鯨の神聖さなどを丸ごと理解しようとする誠意があるからなのでしょう。 鯨との闘いは、野蛮・残酷なのではなく、神聖・崇高で、このことは背景が分からなければ、到底理解されないものなのだろうと感じました。 紛れもない、人間と鯨との間で交わされてきた敬虔と言うべき運命・定めが伝わってくる良質な作品でした。 余りにも想像上の絵が脳裏に浮かび、気になったので、映画『くじらびと』をDVDにて鑑賞しました。読了直後だったこともあり、大いに感銘を受けました。 また、取材開始から7年間の記録をまとめた写真集『海人』が、本書に先立ち97年に出版されており、物好きの虫が騒ぎ出してきました。
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映画くじらびと 鑑賞後に再読し監督のヤバ味を再認識した事をご報告♪ 銛一本で巨鯨を狩るラマレラの人々を追う素敵なレポートが狂気の様相を帯びるのは物語の終盤。 "海の上の物語は撮れた"海の中のドラマを提示してこそ完全なものとなる" と写真家は鯨と人の死...
映画くじらびと 鑑賞後に再読し監督のヤバ味を再認識した事をご報告♪ 銛一本で巨鯨を狩るラマレラの人々を追う素敵なレポートが狂気の様相を帯びるのは物語の終盤。 "海の上の物語は撮れた"海の中のドラマを提示してこそ完全なものとなる" と写真家は鯨と人の死闘の海にダイブし、血の海なかで海の王の今まさに瞑目せんとする眼をレンズに捕捉しフィルムに焼きつけんと巨体に突き立つ銛に手を掛け、海中に引きずり込まれながらシャッターを切りまくる。 憑かれ物狂い王の死に迫り撮る様は本作の白眉。 活字を追って総毛立つ経験は忘れられない。
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