プルースト 読書の喜び 私の好きな名場面

保苅瑞穂【著】

• 販売会社／発売会社: 筑摩書房
• 発売年月日: 2010/12/25
• JAN: 9784480838124

商品レビュー

2022/10/01

プルーストの文学と人生について、『失われた時を求めて』の巻数に沿って、縦横に語った硬派なエッセイ。

吉川一義訳で読了していたが、本書もまた再読を決意させられた、プルーストに対する敬意が伺われた好著であった。

2011/09/03

滋味あふれる一冊。とかくストーリーを速読するような読み方に慣れてしまったせいか、この本のように、文体を、一行一行の書きぶりを、じっくりと味わうような作品に触れると、目が覚めるような気がしました。プルーストを味わうのも、また然りということでしょうか。

2011/06/19

久しぶりにプルーストに関する本を読みました。偶然本屋見つけた本でしたが、改めて『失われて時を求めて』の魅力を強く感じさせてくれる本でした。

著者の保苅先生が大学を退いた後、若いころ留学した思い出のパリでの生活をきっかけに再びプルーストの想いをエッセイとして書き綴ったものですが、エッセイというよりも評論に近い、とても味わいのある本です。私がこれまで抱いていた『失われた時を求めて』に対する漠然としていた印象を解明してくれるような充実した内容となっています。

詳しくは、次のレビューで書きたいと思いますが、プチ・マドレーヌを口にしたところから始まる無意識的記憶は、思考の外にあるがゆえに純粋な現実を美しく表現することが可能な瞬間であり、それを言葉で捉えることが文学の意味するところであるということにすごく心を揺さぶられました。

また、この本では、題名にあるように保苅先生の『失われた時を求めて』での好きな場面が、この作品のなかでの読み方をそえながら随所に引用されていて、数年前に読んだこの作品のその時は読み過ごしていた魅力を呼び起こすことともなり、また洗練された文章が私に信頼・安心感を与えてもくれました。そしてさらに引用された名場面は、言葉と言葉が明確に続いていて原文の印象を的確に伝えてくれているような感じがして、保苅先生翻訳による『失われた時を求めて』全訳を読んでみたくなりました。

この本をきっかけに岩波文庫の吉川一義先生訳により、再び『失われて時を求めて』の扉を開けました。