関節可動域制限 病態の理解と治療の考え方

沖田実(著者)

• 販売会社／発売会社: 三輪書店
• 発売年月日: 2008/01/01
• JAN: 9784895902915

商品レビュー

2012/07/05

理学療法の分野では有名な書。
関節可動域訓練について根本から見直す、ある意味挑戦的な書。
解剖や生理学などの基礎研究を中心に臨床場面場面への応用までの基本的な事項が丁寧に解説してある。

また、著者は、特殊アプローチの危うさまでをオブラートに包みながら批判している。
批判の対象は特殊アプローチそのものに対してではなく、基礎的事項を考慮しないで手技のみを患者に適応させていることについて注意喚起をしていると、そう解釈できる。

基礎研究が多数引用されているけども、内容としては、一貫している。
つまり、拘縮の原因をしっかり分類して捉えることの必要性。
筋収縮と、その筋収縮の結果引き起こされる二次的な不動により拘縮が起こるということ。

筋収縮を解くには、反射のメカニズム（特にIbに対する抑制やα運動神経の不活性化）が多く強調されている。

ただし、肝心なところで、実は脈絡のない（ような）基礎研究を引用されているところもあるので、読者は注意して、良い意味で批判的に読み込む必要がある。
たとえば、骨格筋についての不動の要因について、血管に存在する平滑筋の研究結果を一つだけ引用して論じているところとか・・・
まぁ、それだけ、基礎研究や臨床研究の数・質が乏しいという背景があるのだろうけども、読者のリテラシーが重要となるだろう。

やや説明がくどいように感じるのは一貫しているが、研究の成果がズラリと並べてあるので、それは致し方ないのかもしれない。そもそも、こういった本はそうならざるを得ないのだろう。
引用されている個々の研究の妥当性がどうかという点についても、本来ならば丁寧に調べていく必要があると思われる（読者の責任として）が、それはなかなか・・・。
印象としては、著者の理論補強のために、無駄に引用されているものも多いのではないだろうか。

トータルで見ると、基礎研究（それも実験動物による結果）に論旨が左右されているので、臨床場面での応用はまた別次元で考え直さなければならない。
また、なぜ、拘縮（関節可動域制限）を解決する必要があるのかという点をしっかりと考えなければ、「正常値にするためだけのアプローチ」になりかねない。

この本の熟読した人と、まったく考慮しない人とで、臨床的帰結が異なるのか・・・。
そういった（ちょっと意地悪な）疑問もわき起こってくる。

しかし、確実に読者の知識レベルを引き上げてくれること間違いのない良書と言えると思う。
基礎知識については何度も繰り返し読んで、身につけたいと思う。

2008/08/18

関節可動域制限についてこの1冊を読めば、その病態がわかるんじゃないかって言うくらい、まとまっていて、分かりやすい本です。研究データも多く、信頼できる内容で、何回も繰り返し読みたい本です。
そして、まだまだ不十分な点や解明されていないことも述べており、好奇心や想像力をかき立てる内容になっています。