商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | ポプラ社 |
発売年月日 | 2010/10/05 |
JAN | 9784591120910 |
- 書籍
- 文庫
抱きしめる、東京
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抱きしめる、東京
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商品レビュー
4
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よき時代と、 やがて来る経済成長の波と、 それが終わった残渣と… 時代として40年ちょっと。 それでもだんだんと物事は変わっていくのです。 開発により大事なものは なくなっていきました。 人との関係というものです。 これは現実に感じますよ。 政令指定都市という名目の実質田舎でもね。 (それでも比較的人情はある地域) 地上げ前の時代が本当にキラキラしてるの。 彼女が彼女である要素は ここからきているんだなって。 勉強じゃ得られないものはあるけど ちゃんと彼女はものにしてたんだな…
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森さんの『鷗外の坂』が大好きだ。 やはり東京の、あのあたりで生まれ育った人でないと、ああいう文章は書けないのだろうとは思ってきた。 本書は、その森さんの半生を描く。 戦後復興期、まだ社会全体が貧しかったころの根津。 そこから高度成長を経て、バブルに至る。 森さんは両親とも歯...
森さんの『鷗外の坂』が大好きだ。 やはり東京の、あのあたりで生まれ育った人でないと、ああいう文章は書けないのだろうとは思ってきた。 本書は、その森さんの半生を描く。 戦後復興期、まだ社会全体が貧しかったころの根津。 そこから高度成長を経て、バブルに至る。 森さんは両親とも歯科医師の家に生まれる。 幼いころからピアノやスイミングを習ったり。 時代を考えれば、東京の人はやっぱり違う、と感じさせられる。 田舎で育った両親などの生育環境と比べたら、驚くような格差がある。 家族の様子だけでなく、家の造り、間取り、町の環境についても語られるのは、この人らしいところ。 学生時代は、映画に演劇にと、自由な生活だったようだ。 N響定期公演を、夕食当番の仕事をこなしてから出かけるなんて、うらやましい環境だ。 卒業後は「PR会社」や出版社に、ごく短い期間勤める。 その後、東大の新聞研究所に入ったようだが、その話はちらりと出てくるだけ。 ここでのことを、もう少し知りたかった。 読みごたえがあるのは、やはり、『谷根千』を立ち上げたあたりから。 戦前からある下町の濃い人間関係について、単なるノスタルジーで語れない、負の部分にも言及される。 味噌や醤油を貸し借りする関係は、地域の人にとっては「貧しかったから」。 だから、それが失われた現在、懐かしむ思いはあっても、一方では恥ずかしいものでもある。 こういう複雑な心の機微は、さすがの森さんも取材をするまで気づかなかったことだったという。 まして、私たちには、想像の外だ。 地上げというのは、自分には言葉としては知っている、というたぐいのもの。 実際にはどんなものだったのかは、本書を通して、かなり具体的なイメージが持てた。 住環境が急速に変わる。 売って移転する人、拒んで抵抗する人…住民の方の間に亀裂が走る。 親子の間でいさかいが起きたり、行き場を失ったご老人が出たりするなど、なんとも痛ましいことだ。 そして、結局バブルが崩壊して、塩漬けになった土地もたくさん出たとか。 バブルのころは、もう自分も生まれている。 子供だったので、大した観察もできていないのだが、やはり地方で見ているのと渦中で見るのとでは、全く違う風景が見えたのだろう。 二度目の東京オリンピックが終わった今年。 今の東京を、森さんはどのように見ているのだろう。
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