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明治・大正・昭和政界秘史
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明治・大正・昭和政界秘史
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商品レビュー
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「明治・大正・昭和政界秘史」。これが滅法面白いのであります。若槻禮次郎(1866‐1949)といへば、日本の第25代・28代内閣総理大臣として歴史に名を残してゐるので、授業中に居眠りをしてゐた人でも頭の片隅に記憶があるでせう。但し何かを成し遂げた人とか、歴史の変る中で存在感を示...
「明治・大正・昭和政界秘史」。これが滅法面白いのであります。若槻禮次郎(1866‐1949)といへば、日本の第25代・28代内閣総理大臣として歴史に名を残してゐるので、授業中に居眠りをしてゐた人でも頭の片隅に記憶があるでせう。但し何かを成し遂げた人とか、歴史の変る中で存在感を示した人とかの印象は弱いのではないでせうか。少なくともわたくしはさうでした。何、無知なお前と一緒にするな? あゝ、ご無礼しました。 本書はもう若槻が隠居した後、最晩年といつて良い昭和24年の「月刊読売」誌上ださうです。自らが身を投じた明治大正昭和の政界の裏側を証言する一冊。自分しか与り知らぬ事項も多々あるので、このまま死んだら永久に世に出ない事実があると考へ、かういふ連載を始めたさうです。全四章構成で、夫々「学生時代」「大蔵省時代」「政党時代」「重臣時代」となつてゐます。基本的に時系列で執筆されてをります。 登場する総理大臣は、自身の他、西園寺公望・桂太郎・山本権兵衛・大隈重信・寺内正毅・原敬・高橋是清・清浦奎吾・加藤高明・田中義一・浜口雄幸・犬養毅・斎藤實・岡田啓介・広田弘毅・林銑十郎・近衛文麿・平沼騏一郎・阿部信行・米内光政・東條英機・小磯国昭・鈴木貫太郎・東久邇宮稔彦王・幣原喜重郎・吉田茂と吃驚するほど多い。泡沫内閣もありました。夫々退陣の理由とか、総解散に追込まれた事情とか、政変、クーデター、暗殺事件などの裏側を述べてをります。まあ中には想像で記述した部分もありますが。 それにしても暗い時代ですねえ。日々軍部の力が強くなり、満州政策などでは軍部が政府の言ふ事を聞かず、暴走してゐた様子が書かれてゐます。陸相海相の軍人大臣は、ボイコットすることで内閣を潰してしまふことが多々ありました。さういへば太平洋戦争を描いた映画なんかでも、日独伊三国同盟に反対する米内光政内閣を潰してしまへと、畑俊六陸相が組閣早々に辞意を伝へ、後任は推薦できませんといふ場面がありました。それで米内内閣は簡単に退陣してしまつたのでした。 まあさういふ内容ですから面白くない筈がない。まるで口述筆記みたいな語り口で、ユウモワも交へ、実に分かり易い。東京裁判に対する考へは、いまいち判然としないところもありますが。天皇を裁判に呼び出さない事が決まつた時には、涙が出るほど嬉しかつたと述べてゐます。 東京裁判の首席検察官だつたジョゼフ・キーナンは、岡田啓介・宇垣一成・米内光政そして若槻の四人を「戦前を代表する平和主義者」として、戦後パーティに招待してゐます。 健全な思想を持ちながら、押し出しが弱く、印象の弱い首相として定着してしまつた。会議の席で強く自説を貫き通せなかつた事を反省する記述もありました。若槻禮次郎研究はやはり他の首相経験者に比しても少ないさうです。 そんな貴重な本書、伊藤隆氏による解説が丁寧で親切です。若槻の本文中の記憶違ひや誤りなども指摘し、正誤表の役割も果たしてゐます。この解説は余りに丁寧過ぎて、引用部分などはスルーしてしまつた程です。いずれにせよ、読んで損は無い一冊と申せませう。難点は、学術文庫といふことで、単価がやや高い事ですな。もう千円超の文庫本は当り前になつてしまつたねえ。
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日本議会政治隆盛期に総理大臣を勤めた若槻禮次郎の自伝。 序 第一章 学生時代 第二章 大蔵省時代 第三章 政党時代 第四章 重臣時代 若槻禮次郎は、島根県松江市の生まれ。松江藩の足軽 の家に生まれる。生活は困窮を極め苦学して、司法学校へ進み、東京帝国大学を卒業し、...
日本議会政治隆盛期に総理大臣を勤めた若槻禮次郎の自伝。 序 第一章 学生時代 第二章 大蔵省時代 第三章 政党時代 第四章 重臣時代 若槻禮次郎は、島根県松江市の生まれ。松江藩の足軽 の家に生まれる。生活は困窮を極め苦学して、司法学校へ進み、東京帝国大学を卒業し、大蔵省へ入省する。大蔵次官、大蔵大臣を歴任後、政党入りし政党政治家として活動し、内閣総理大臣となる。また、ロンドン軍縮会議の首席全権を勤めた。 とにかくめっぽう面白い。解説にもあるが、文章が平明で具体的であり理性的である。また、記述が比較的正確であり公正である。 若槻が首相を勤めた時代(第二次内閣時)、政党政治は力を失い、軍部が暴走を始める。 熾烈な政争については、現代の教訓となる部分を大きく含んでいる。政権交代が行われる以上、与野党とも節度が必要であろう。若槻は政友会の節度の無さを批判する。 満州事変は軍部が内閣の事変不拡大の方針に反し、拡大の一途をたどる。惜しまれるのは、政府が朝鮮軍派遣の経費を支弁した事である。勅栽を得ることなく勝手に行動した経費を支弁するという事は、朝鮮軍を追認する事であり、禍根を残したと思う。(もっとも、テロかクーデターにより内閣は崩壊していたかもしれないので、無政府状態で戦争をおこなうという最悪の事態になったかもしれないが) 伊藤隆による解説も素晴らしい。他の史料を駆使し、若槻の記述を補い、誤りを正そうとしている。政治家が回顧録を残し、史家が検証するという理想的な形となっているが、文庫という形で安価に読めるのは嬉しい。昭和史の基礎史料としてお勧めである。
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若槻(かっこいい)の語る政界史。 後半特に顕著になってきますが、自伝というより「自分の見た当時の情勢」という印象。 指摘されているように、視点が冷静で良い意味で熱狂的でなく、しかし芯はしっかりしているという感じです。
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