漢拏山へひまわりを 済州島四・三事件を体験した金東日の歳月 新幹社選書

金昌厚【著】, 李美於【訳】

• 販売会社／発売会社: 新幹社
• 発売年月日: 2010/05/18
• JAN: 9784884000905

商品レビュー

2010/11/13

　以前に、済州島の四・三事件を扱ったNHKの特集番組で見て、凛とした姿が印象的だった金東日さんの証言を、丁寧に、語りの口調を損なうことなくまとめた好著。四・三事件の直接の体験者の貴重な証言の日本語訳でもある。聞き書き、ないしはオーラル・ヒストリーはこうあるべきだとも思う。「冷蔵庫のなかの腐った肉」と自身を表現する語り手が、涙とともに凍てついた記憶を溶かし出し、四・三事件をその現在性において浮き彫りにする。済州島と朝鮮半島を行き来し、日本へ漂着した後も苦労の絶えない生きざまも心を打つ。「ひまわりを」というのは、事件の死者一人ひとりを哀悼する姿勢を端的に表わしていよう。同時にベンヤミンが「歴史の概念について」で語った太陽へ頭を向ける花のことも思い出される。

2010/07/22

春に済州島に行ったもので、４・３事件関連本を読んでいる。事件当時16歳の少女で、武装ゲリラ側の連絡員をしていた、今は日本に住んでいる朝鮮人女性の聞き書き。4・3事件、朝鮮戦争、在日朝鮮人、移住、それぞれのことがばらばらに語られているけど、ほんとは一人の人生の中で、みんなつながっているんですよね。解説もとてもいいです。ひとつだけ不満は、注釈がまったくついてないことかな。