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荷風全集(第10巻) 柳さくら・江戸藝術論
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 岩波書店 |
発売年月日 | 2010/03/24 |
JAN | 9784000917308 |
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荷風全集(第10巻)
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巻頭、「散柳窓夕栄」「恋衣花笠森」は1913(大正2)年に発表された江戸時代を舞台とし、実在の人物を配した時代物の小説で、『柳さくら』という題で単行本となった。 前者は岩波文庫にも入っていたが、後者は未読だった。これは後者の方が自分には面白く、好ましかった。それは後者には女性...
巻頭、「散柳窓夕栄」「恋衣花笠森」は1913(大正2)年に発表された江戸時代を舞台とし、実在の人物を配した時代物の小説で、『柳さくら』という題で単行本となった。 前者は岩波文庫にも入っていたが、後者は未読だった。これは後者の方が自分には面白く、好ましかった。それは後者には女性登場人物がクローズアップされるせいかもしれない。どうやら、私は荷風の描く女性像が好きなのかもしれない。前者「散柳窓夕栄」は男性ばかりが出てくるので、さほど惹かれるものがなかったのだろう。 未完の小説「父の恩」は1913(大正2)年と1919(大正8)年に発表され、その後春陽堂の荷風全集に収められたもの。これは荷風の帰朝後の思想の遷移を知る上で極めて興味深いものだ。『冷笑』と同様に、海外から振り返って「日本文化」を対象化し、当時の趨勢を批判する姿勢であり、複数の若者に荷風思想が託された議論小説の様態をしめす。が、途中から新たな展開が試みられている。急速な西洋化のただ中にある日本文化に失望していたところ、そこで漢文学の素養のある「私」の父親が振り返られ、中国文化に思いが馳せられるのである。今のところ私が知る限り、荷風が明確に中国文化に思考を向けたのはこれあるのみ。さてそこで中国文化、それに歴史上強く影響され続けたかつての日本文化というものがどのように思考されるのか、また、前半部分の「現在の日本」への批判といかに接合されあるいは止揚されるのか、俄然興味が湧くところだが、そこで小説が中断されてしまう。 全集所収時に付された序文で、作者は「聊か思ふところあり中途にして稿を絶ちぬ。」とのみ記してあるきりだが、一体どう思ったのかも謎である。 恐らく『冷笑』よりも先の思想展開を呈示したであろう本作の行方が分からぬまま中絶されたことが惜しく、そして、分からないだけにこの謎は魅惑的である。 1913(大正2)年から翌年にかけて執筆され、後に『江戸藝術論』としてまとめられたエッセイは江戸時代の浮世絵を論じたものだが、荷風が浮世絵の歴史について非常に詳しく、専門の評論家に迫るくらいの知識を持っていたことに驚く。 彼が最も愛好したと思われる鈴木春信、自他問わず最大の浮世絵師と目される歌麿・北斎等を語る荷風の筆致は、多分に主観的で情緒的ではあるものの、緻密な知識い裏付けられているだけに重みがある。読んでみると荷風が次々に論述してゆく浮世絵を自分も鑑賞したくなってくる。 荷風はとりわけ浮世絵に描かれた女性たちのイメージを愛したように見受けられるが、なるほど、荷風の小説に登場する若い女性たちの魅力は、荷風が見たこれらの浮世絵中の女性イメージに由来しているのかもしれない。そう思うと、更に私も浮世絵をもっと見ておきたいと思うのだ。
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