大きな熊が来る前に、おやすみ。 新潮文庫

島本理生【著】

• 販売会社／発売会社: 新潮社
• 発売年月日: 2010/02/26
• JAN: 9784101314815

商品レビュー

2024/07/03

「なぜ人は時として、つらくて苦しいことに自ら飛び込んでしまうのでしょうか…ただ、見ないふりをしているかぎり暗闇はずっとそこにあって、一度は光の中に引っ張り出されなければ何度でも引きずり込まれてしまう。」
わたしも自分の醜い感情や思い出したくない記憶、人に話せない暗いものを見つめ直し、誰か苦しみに共感してくれる人を見つけ共に生きることで、大きな態に怯えることのない日を迎えたいと切に感じた。

2024/05/25

表題作含め、『クロコダイルの午睡』『猫と君のとなり』のどれも暗い印象を受けた作品。生きづらさを感じながら、それでも人と関わり合いながら生きていく女性たちが主人公となっている。すべての主人公の女性に共通するのは男性から暴力を受けたということ。一応恋愛の話にはなっているが、それ以上に女性たちの過去が裏に見え隠れしながら進む展開に、やや気持ち下がりながら読み進めた。
人には言えない陰の部分を抱えながら生きる女性たちには共感できる部分もあり、感情移入もできたが、どの作品も読後感がよくなかった。それゆえに、どの作品にも良い印象を抱けていないと思う。
信頼していた人から受けたそれにより、心の傷やトラウマを抱え、それでも目の前に現れた男性に身を委ねようか、共に人生を歩もうか逡巡するのは、簡単なことではないが、どのように決断するのか気になりながら読み進めた。

2023/12/23

『大きな熊が来る前に、おやすみ。』
酒井駒子さんのカバー装画が素敵。
暴力をふるった彼を信じたい気持ちが切実に描かれている。
「子供が暴れるのは、泣くのは、自分の気持ちが通じなくて、だけど伝えたいと思うからなんだな。たとえ感情が爆発してるだけに過ぎないとしても、伝えたくて、でも上手くできなくて」私も大人になりきれていなくて泣いたり癇癪起こしたりしてしまうから、すごくわかる。

『クロコダイルの午睡』
私も熱川バナナワニ園のワニになりたい。
「私は、昔から、こういう完璧に手入れされた爪が怖かった。あの爪では、お釜の中の米を研ぐことはできない。ハンバーグの挽肉をこねることも、焦げた鍋の底を強く擦ることも。あらゆる点で長い爪は非実用的なのだ。そして実用性よりも鑑賞することを求められる種類の女性というのは確実に、いる。そして、私は違う。だから私にはできない。」という言葉に共感した。

『猫と君のとなり』荻原くんみたいな人、現れないかな～