都市計画家・石川栄耀 都市探求の軌跡

中島直人, 西成典久, 初田香成, 佐野浩祥, 津々見崇【共著】

• 販売会社／発売会社: 鹿島出版会
• 発売年月日: 2009/03/20
• JAN: 9784306093966

商品レビュー

2019/12/04

「社会に対する愛情―これを都市計画という」の名言や、新宿歌舞伎町の命名などで知られる都市計画家についての初の研究書。共著というスタイルを通じて、石川の幅広い活動を描くことに成功している（重複する記述がやや目立つのは、仕方ないか）。巻末の詳細な著作一覧も、今後の研究の基礎になるだろう。図版が多いのもうれしい。

失敗に終わった大風呂敷な戦災復興計画のなかにも、細かくみれば現在に受け継がれているものがあるとの指摘や、児童書執筆や文化活動に取り組んだ動機についての分析など、敗戦後の諸活動に関する記述がとくに印象的であった。ナチズムからの影響については、さらに色々な角度から掘り下げることもできるだろう。

もし石川が現在の歌舞伎町をみたら、どんな感想をもらすだろうか。

2011/11/04

　中邨章さんの『東京市政と都市計画』の参考図書。

　東日本大震災の復興を考える上でも、戦災復興を担い、そして失敗したと言われる石川先生の業績を学ぶことは重要だと思う。

　一言で言って、石川先生は、単なる道路、公園の設計だけでなく、その都市空間での賑わいといったソフト面まで含んだ、総合的な都市計画を目指している。

　それは、いわゆる法定都市計画の枠も越えた、都市そのものの魅力づくりにつながっている。

①広場のない民族。それは笑いのない民族というに等しい。日本人全体はそこを淋しがり、その再建に全力をそそがなければならない。（ｐ２７１）

　石川先生が努力した広場はいつの間にか道路に化けたりしている。広場を地面と花壇、植栽ももった小公園とも小空間とでもいえるような空間として位置づけ、地域住民の管理にゆだねる仕組みができないだろうか。法律のすきまでもある。

②法律外の都市計画ーそれは例えば政策として決めるべき都市計画、官公庁の事業の協力による都市計画、企業体の事業の協力による都市計画、市民個々の仕事の協力による都市計画というようなものが必要です。（ｐ３３７）

③市民よ。都市とは家屋の集合ではない。道路ではない。都市とは市民の化合体である。市民の心の化合体である。『相むつみあう心』なき市民によって何で都市が成立しよう。（ｐ６９）

　道路、公園などのハードの整備だけでなく、建築物、特に商業施設、繁華街の整備、そして維持など、広範な課題について、自分は、都市計画そのものの課題として取り組んでいきたい。

　復興にあたっても、被災者の生活と生業を支える、広い意味での基盤として都市計画を考えていきたい。

　なお、図書館の借り物なので付箋をつけたページ。ｐ２３，３１，３３，４３，４８，６９，１２８，１６３，１７６，１９６，２０３，２２４，２３５，２７１，２９２，２９７，３１７，３２４，３３７．参考文献としては、鈴木栄太郎『日本農村社会学原理』。

　これは購入して、手元においておきたい本。