ないもの、あります ちくま文庫

クラフト・エヴィング商會【著】

• 販売会社／発売会社: 筑摩書房
• 発売年月日: 2009/02/10
• JAN: 9784480425713

商品レビュー

2024/10/02

面白かった！本物の販売リストを読んでいるみたいで、内容はしょうもないのに口調が丁寧なのがまた面白い。
最後が大風呂敷なのがうまいな〜と思った。

2024/09/21

　本書はタイトル通り、ことばとしてはあるけれど、実際には存在しないものに関する架空の商品カタログです。目次ならぬ目録には、catalogue no.1〜26がズラリと並んでいます。

　なるほど、よく遣われることばばかりですが、全て目に見えないものばかりです。目録だけで想像が膨らみます。クラフト・エヴィング商會は、これらをどう調理し、奇想天外な空想の料理を提供してくれるのか‥興味津々です。

　直前に読んだ『注文の多い注文書』でも、小川洋子さんとのコラボにより、遺憾なく個性が発揮されていました。本書は、ないものをつくる当商會の真骨頂であると思えます。
　見開き4ページに、解説3ページ＋商品イラスト・説明1ページの構成で、まるで落語の小噺を聞いている感覚です。あたかもそのものが存在するような語り口は、妙なリアリティと説得力があり、想像が掻き立てられます。

　くだらないと見るか、面白いと感じニヤリとするかは、読み手次第でしょう。少なくとも、それぞれの商品の解説は、冗談の中に寓話を含んだような、深い内容も読み取れます。著者曰く「ちょいと毒入りの辛口隠し味の本」です。
　本書を愉しめる心のゆとり、懐の広さは持ち合わせたいものです。

2024/06/01

日本語の慣用句に対するジョークの短編・イラスト集。26作品が収録されている。気分転換にサクッと読めてちょっと面白い。

p.60　語り草
「＜語り草＞なるもの、育てすぎますと＜お笑い草＞に化けてしまうことが、しばしばであります。」
→実際によくありそう。伝承や評判にも「過ぎたるはなお及ばざるがごとし」が適用されることがある。

p.76　転ばぬ先の杖
「常にいつでも傘をさしていれば、人は決して雨になど濡れない。」
→リスクヘッジのコストを端的に表した良い言葉だと思う。必ずしも安全策を取れば良いというわけでもない。

p.111　大風呂敷
「広げた以上は、かならず「中身」を見せること。そして、お客様にじゅうぶん喜んでいただいたら、なるべくすみやかに、さっと風呂敷をたたむこと。」
→学びがある。交渉やブラフはさじ加減や引きどきが寛容であること。そして武器や道具は適切な使い方を知りその通りに使うこと。