商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 中央公論新社 |
発売年月日 | 2008/11/10 |
JAN | 9784121601063 |
- 書籍
- 新書
日本雑記
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日本雑記
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商品レビュー
3.5
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ドイツ人の建築家、タウトの日本滞在記。 外国人目線で日本の文化が、とくに日本の建築物に現れる日本の文化が絶賛されていて、気分のよくなる本(笑)。 タウト自身も、もちろん考察に富んだ人であることは間違いないのだが、翻訳の日本語の自在さにも圧倒される。流れるような日本語の語彙を身につけた文章。隅々まで神経をいきわたらせた一文がすばらしい。ただその分、読み進めるのには、たっぷりと時間がかかった。 日本語は、たとえば一人称だけでもいくつでも書き表す言葉があるから、それをただ選んで、そっとおくだけでそれがもう、芸術たるという、俳句の説明がすごく腑に落ちた。何かを表現するというとき、あえて躍動的に何かを動かそうとしなくても、ただ落ちてきたものを書きとめる静的な姿勢だけで十分、そんな日本語の性質に、心躍る気がする。 タウト夫妻は日本に船でやってきて、昔ながらの日本家屋を仮宿として3年ほど暮らした、という。本書は、その滞在の中で、タウト氏が体験したことや感じたこと、考察したこと、旅した記録など、まさしく「日記帳」のような感じのことが、いくつかのまとまりをもって、束ねられている。 とくに、建築と木という素材、日本の風土を交えた考察がとてもよかった。日本は火山の国であり、そのために岩が砕かれて土になり森林の多い国になり、建築資材は岩ではなく木になった、という。 自然と交わりながら生きる日本の原風景をタウト氏は絶賛している。(あるいは、日本でなくてもよかったのかもしれない。わたしがアラスカの自然の中で暮らす人たちのエッセイを読んだときに、心に巻き起こった感情と、彼が抱いたものは、似ているのかもしれない。) 京都に熱をよせる一方、鎌倉とか将軍とかを、タウト氏はめっちゃ嫌う。なんか、どの時代もただの歴史として見ていて、「好き嫌い」という思想めいた目で見たことがなかったので、それも新鮮だった。 彼にとって、ここまで日本に肩入れしたくなったのは、どんな背景があったのだろうか、と思ったりもする。 風土を生かした建築、人々の暮らしというのは、実に合理的である、と氏は主張する。この建築様式や資材を使っているから進歩しているとか、反対に理解しえない野蛮さがあるとか、そういうことではない、という。 ある土地の人が別の土地に来て暮らしたら、やはり、同じような建築様式に落ち着くだろう、という考えが、よかった。 どんな土地の人にも、表面上の違いはあれど、それを形成するために根底にあるのは、共通性を兼ね備えた合理性である、という、彼のあたたかさである。反戦の思想につながる彼の主張が随所にかいまみえて、よかった。 素朴なものの中にこそ、芸術的な価値を見いだす姿勢、その象徴として、農民や農家に対する眼差しは、はっとするものがある。とくに日本人として。彼が、「いかもの」と名付けた、はではでしさ、つくりものの日本感を、いつの間にやら日本人たちも喜ぶような世の中になってはいないだろうか。 タウトの警告は、残念なことに、今の日本で、とくに有効になっていているように思われる。素朴であたたかい、外国から来た一人の紳士が日本に惚れこんでくれたその部分。その部分を見いだす目を、日本だけではなく、世界のなかに、残し続けていきたい。
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「タウトが撮ったニッポン」を読んで昭和初期の日本(の文化状況)に興味が湧いてきた。 折よくこういう本も復刊されてたので買い。
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