賄賂とアテナイ民主政 美徳から犯罪へ historia

橋場弦【著】

• 販売会社／発売会社: 山川出版社
• 発売年月日: 2008/11/10
• JAN: 9784634491991

商品レビュー

2024/09/10

賄賂と聞くと、あまり良い印象を持つひとは少ないだろうが、古代ギリシアにおいては贈与互酬が根付いており、もともとは美徳とさえされていたらしい。考えてみれば、こっそりお金を渡して、それに見合う便宜を図ってもらうというのは、たしかにただの互酬である。

しかしアテナイにおいて、これは断罪されるようになる。大きな原因はペルシア戦争で、外部の人間が賄賂を使って自国の人間を買収していれば、それは問題となって当然だろう。これは現代の収賄とは問題の質がちがう。現代の収賄は、内輪で行われるものである。

美徳とされていたら贈与が、どのようにして非難へと向かい、法的に解消されていったか。読んでみると、最後まではっきりとは解消されなかったようだが、その経緯が短いながらもおもしろくまとまっていた。

2017/03/31

なるほど。

「結局、古代ギリシア人が、どの程度賄賂に手を染めていたのかという問いに対しては、回答不能としか答えようがない。問うべき問題はむしろ、賄賂に対するアテナイ人もしくはギリシア人一般の価値観や態度が、どのように形成されていったのか、つまり彼らにとって、何が許される贈与で、何が許されない贈与だったか、ということだろう。なぜなら、われわれが資料的に実証できるのは、賄賂について何がいわれ、どのような態度や行動が取られたか、ということだけだからである。」「このようにして1980年代以降、研究者たちが賄賂横行の事実確定よりも、むしろ賄賂に関わる価値観ないしイデオロギーに焦点をあてるようになったことは、大きな意義をもつ。」pp.29-30