商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 創文社 |
発売年月日 | 1984/01/01 |
JAN | 9784423920190 |
- 書籍
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山からの絵本
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山からの絵本
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『"まァいいや"とボクがいうと"なにがまァいいやだ、そりゃこっちのセリフだ"とまたKがとがった声をだしたが、もう別にどうということはなかった。なにしろはじめから計画など皆無なのだ』ー『はじめてのスキーツアー』 『夢中になることは素晴らしい...
『"まァいいや"とボクがいうと"なにがまァいいやだ、そりゃこっちのセリフだ"とまたKがとがった声をだしたが、もう別にどうということはなかった。なにしろはじめから計画など皆無なのだ』ー『はじめてのスキーツアー』 『夢中になることは素晴らしいことだけれども、夢中になるためには、相当多量の馬鹿らしさが必要だ。つまり人間夢中になるためには無知が大切な条件なのだ』-『三つの岩』 一つ一つの画は一見抽象的にも見えはするが、実はデフォルメされているとはいえとても写実的なのだと、そこに添えられた文章を読むと理解できる。その画は作家が実際に経験した場面であり、そこにどんな物語が隠されているのかが丁寧に語られる。それを読んでいると、おや、という感慨が湧く。 凝った文章ではない。しかし何かとてもしっかりとした知恵のようなものに裏打ちされた言葉である。そんな気配が濃厚に漂う。それを「哲学的」と呼んでみたくもなるが、その言葉によって喚起される、室内に閉じこもった思索と、ここにある自然、野生の凄みとの間には、とんでもない程の隔たりがあり、躊躇してしまう。 知恵、と言ったが、山で生きるための知恵とは分別のようなものではなく、大半が快適さとは無縁の生死を分ける技術のことである。それはガイドブックや登山マニュアルのような「情報」という形に収め直すこともあるいは可能であるかも知れないけれど、そんなような形では決して伝えきれない何かが残る。辻まことの、この画と文章には、そんな情報化し得ない筈の何かが濃縮されたエキスのように満ちているように思える。 だからこそ、平易な文章であり、文字数もさほど大量というわけでもないのに、頁をどんどんめくってゆくような読み方ができない。一つ一つの段落にいちいち新しい気持ちで臨まざるを得ない。一つ一つ、画に向かい、それに添えられた文章に向かわなくてはならない、そんな気圧されたような心持ちにいつの間にかなってしまう。 思えばそれは山に向かう時の気持ちと似たようなところがあるような気がする。ああ、自分はその新鮮な気持ちの張りを抱くことを、随分と長い間し忘れていたな、とふと思い起こされる。まさに、タイトル通り、山からの絵本、なのだな、と一人合点する。
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