商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 東京創元社 |
発売年月日 | 1982/10/21 |
JAN | 9784488172015 |
- 書籍
- 文庫
陸橋殺人事件
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陸橋殺人事件
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商品レビュー
2.8
6件のお客様レビュー
本職は聖職者という異色の作家で、創作上のルールを定義した「ノックスの十戒」でミステリファンにはお馴染みだろう。創作期間は10年と短く、本人の意志に反して、教会など身内の抵抗にあって断筆に追い込まれたらしい。環境に恵まれなかった不運なノックスだが、処女作となる本作を読む限りでは、シ...
本職は聖職者という異色の作家で、創作上のルールを定義した「ノックスの十戒」でミステリファンにはお馴染みだろう。創作期間は10年と短く、本人の意志に反して、教会など身内の抵抗にあって断筆に追い込まれたらしい。環境に恵まれなかった不運なノックスだが、処女作となる本作を読む限りでは、シニカルなユーモア感覚の持ち主だったことが分かる。 翻訳本の後書きでも触れているが、冒頭で書き手が「事件発生の場所を架空にする作者は信頼できない」と前口上するにも関わらず、本作の舞台は架空であること。後年に著した「十戒」で提言したフェアプレイの精神に必ずしも忠実ではなく、敢えて定石を破る構成であること。保守的なミステリ界隈を茶化している感があり、その延長線上に「十戒」という堅苦しい戒律を示して、作家や読者の反応を楽しむノックスの捻れた心理が読み取れるのである。 本作のストーリーは暇をもてあました素人探偵が、ゴルフ場近くの陸橋から落ちたと思しき死体を巡り、探偵ゲームに勤しむというもの。本格物の形式を捩った〝メタミステリ〟の一種で、時期的には、この分野での先駆といっていい。深みや味わいはないが、プロット自体は練られており、ストレートなミステリに飽き足らない読者は楽しめるだろう。ただし、推理合戦のネタとなるトリック用小道具には不自然さが目立ち、こじつけも多い。人物の描き分けも決して巧みとはいえず、整理しきれていない。ただ、遊戯としてのミステリに対する作者の愛情は伝わってくるため、苦笑しながらも楽しむことはできるだろう。 種明かしをする結末のあっさり感は、名探偵が関係者一同を集めて延々と推理を披露する既存のミステリへの当て付けと受け止めることができ、ノックスの得意げな顔が浮かんでくる。 本作発表は本格推理黄金期にあたる1925年。この時代は、主流であったストレートな謎解きものが飽和状態に達し、サスペンスやハードボイルド、スパイ小説などに本格的な書き手が次々に登場して、広義のミステリとしてのジャンルが成熟しつつあった。いわば本格ものを〝変格〟する土壌も整っていた時で、しかも専門作家以外からのアプローチというのも面白い。
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ゴルフのプレー中に発見された、顔のつぶれた謎の死体。ゴルフ仲間4人は、警察が自殺として処理したことに不信を抱き、素人探偵よろしく調査に乗り出す。 自殺・他殺・事故死のいずれか、死人は誰か、被害者の殺された場所はどこか、被害者はどの列車に乗っていたのか、動機、被害者のポケットに入っ...
ゴルフのプレー中に発見された、顔のつぶれた謎の死体。ゴルフ仲間4人は、警察が自殺として処理したことに不信を抱き、素人探偵よろしく調査に乗り出す。 自殺・他殺・事故死のいずれか、死人は誰か、被害者の殺された場所はどこか、被害者はどの列車に乗っていたのか、動機、被害者のポケットに入っていた手紙に書かれていた2つの暗号の謎、腕時計と懐中時計の指示時刻の食い違いの謎、定期券を持っているはずなのに三等乗車券を買っていた謎、別人のハンカチを持っていた謎、現場近くで見つかったゴルフボールの謎、暗号文がいったん盗まれて戻された謎、女性の写真が入れ替わった謎等々、様々な謎が示され、4人の間で推理が戦わされ、仮説が示され、それを調査する課程が丁寧に描かれており、好感が持てる。 推理の中身は思い込みによる仮説にすぎないのだが、途中でカーマイクルが示した仮説は意表を突くものであり、驚かされた。 また、最後の方で示されたリーヴズの推理に対するゴードンの反証は論理的で、的を射たもの。 暗号の謎の真相は、当時の英国でこのようなことが流行していたのだろうか、日本人には到底推理できるものではないのが残念。 本格ガチガチの進行の中で、うっちゃった真相には賛否両論ありそうだが、個人的には支持したい。 最後のカーマイクルの手紙の中で示唆されている、ある人物の役割が意味深。私は、3分の2まで読んだ時点で、この人が犯人だと予想していた。
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一見してみると、奥が深いのだろうか。読み進んでいくと、コナン・ドイルの生み出した名探偵ホームズの名が所々にでてくる。そんなホームズに憧れた素人が一人の死体から推理を始めていく。最後の終わり方は、何ともずっこけてしまうような終わり方である。私はそんな本作に、理想と現実の開きを見た気...
一見してみると、奥が深いのだろうか。読み進んでいくと、コナン・ドイルの生み出した名探偵ホームズの名が所々にでてくる。そんなホームズに憧れた素人が一人の死体から推理を始めていく。最後の終わり方は、何ともずっこけてしまうような終わり方である。私はそんな本作に、理想と現実の開きを見た気がした。 翻訳が古いので、新しく再翻訳したものが読みたいと思った。
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