商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 名古屋大学出版会 |
発売年月日 | 2008/01/10 |
JAN | 9784815805722 |
- 書籍
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民主化の韓国政治
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民主化の韓国政治
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ぞくぞくするほど面白い本だった。ごくごく簡単なまとめと感想。四月革命で李承晩を退陣に追い込み成立した暫定政権下での憲法改正では議院内閣制を採用することで民主主義を実現しようとしたが、第六共和国として現在に至る87年の民主化は第五共和国の大統領間接選挙制を直接選挙制に変更したものの...
ぞくぞくするほど面白い本だった。ごくごく簡単なまとめと感想。四月革命で李承晩を退陣に追い込み成立した暫定政権下での憲法改正では議院内閣制を採用することで民主主義を実現しようとしたが、第六共和国として現在に至る87年の民主化は第五共和国の大統領間接選挙制を直接選挙制に変更したもののそれは憲法上の文面では61年クーデタを経て政権を奪取した朴正煕の第三共和国に似て強い権限を持つ大統領の国民による直接選挙だった。つまり、60年から87年の間に国民が考える理想の‘民主主義’、韓国人の‘民主主義’に対する認識が変化したと言え、それはどういうことなのか、ということを明らかにするために第三共和国体制の与野党政治家、反体制運動を中心に追っている。本論でかなり込み入った複雑で詳細な野党内の勢力動向に読者は迷い込むだろうが、上記のように強い問いを設定しているため何を知ろうとしているのか見失わずに済む。この問いに対する著者の答えをあえて一言にまとめるとしたら次のよう。朴正煕による軍事クーデタからなし崩し的に成立した第三共和国に終止符を打ち、朴正煕による本格的な独裁体制を敷くための維新クーデタが、皮肉にも「野党がそれまで最も苦労してきた、既存の体制への対案をめぐる問題を一挙に解決することとなった。つまり、民主化とは「大統領直接選挙制」実現のことであり、それはすなわち「維新クーデタ」以前の体制に戻ることを意味していた」。しかしおそらく本書で最も重要なのはこの答えではなく、見るべきところは、それまで大きく二つに分裂していた野党が、維新クーデタ後、対政権「強硬派」が力を得て穏健派を押さえ、維新体制を反動にして自分たちの立ち居地を定めるまでのその20年間のプロセスを追うことだと思う。四月革命、61年のクーデタ後の民政移管期、日韓国交正常化反対運動といった重要なイベントを経ながら、その間の大統領選挙、国会議員選挙で、野党がまとまりさえすれば政権奪取をする可能性があったにもかかわらず、なぜそうすることができなかったのか、なぜ穏健派、強硬派などに分裂して朴正煕に対抗して自らの正統性を武器に勝ちに行くことができなかったのか。尹潽善、柳珍山、兪鎮午というキーパーソンとなる旧世代の野党指導者たちを彼らの生い立ちと時代が形成した思想的背景に踏み込んで描き、そして日帝からも権威主義的な前政権からも軍事政権からも汚されない「潔白な」政治家でいることが困難だった「元インサイダー」として彼らの矛盾、撞着、次第に行き場を失っていく様子を描く一方で、維新クーデタ後に活発となる民主化運動の旗手である金泳三、金大中たちが、古い野党指導者とどのように違うのか、「アメリカ的な民主主義の影響を受けながら育ってきた」彼らが穏健派から強硬路線に転換しながら民主化闘争に突き進んでいったその成り行きで締めくくっている。私の読み込み、勉強不足だろうが、一度は求められた議員内閣制がなぜ選択肢としても考えられなかったのかというところは、それでもスッキリしないところもあった。しかしとにかく素晴らしく生き生きした本だった。
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