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大大阪イメージ 増殖するマンモス/モダン都市の幻像
2,640円
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 創元社 |
発売年月日 | 2007/12/10 |
JAN | 9784422250502 |
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大大阪イメージ
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両親共に東京出身の私としては、子ども時代より上方への憧れのようなものをそこはかとなく熟成させてきた。したがって大学に入ると、関西から来た友人が増え、大阪出身の友人と話すことは大いなる喜びとなった。 私と大阪の出会いはおそらく、子どもの頃に放送されていた花登筐『銭の花』のテレビ...
両親共に東京出身の私としては、子ども時代より上方への憧れのようなものをそこはかとなく熟成させてきた。したがって大学に入ると、関西から来た友人が増え、大阪出身の友人と話すことは大いなる喜びとなった。 私と大阪の出会いはおそらく、子どもの頃に放送されていた花登筐『銭の花』のテレビドラマ化『細うで繁盛記』であるとか『あかんたれ』といった船場のあきんどのど根性ものにおいてであった。陰険きわまりない『あかんたれ』における新珠三千代は、思慕に値するイメージであり、か弱いものへの憐憫を初めて感じた体験であった。 しかしたいがいの大阪人は、こういう陰険な船場の世界を非常に嫌がる。ああいうものに関わるぐらいなら、《吉本・粉もん・タイガース》の紋切型のほうがまだしっくりくると主張する人が多い。一方で、生来の資質で《吉本・粉もん・タイガース》にどうしても親しめない人間(とくにたこ焼きやお好み焼きは、味、匂い共に苦手)としては、大阪人の生活上の実感とは無縁な幻想の中の大阪にどうも耽溺してしまうのである。織田作の描く法善寺横丁、あるいは八住利雄のシナリオが冴えわたる『大阪の宿』(1954 五所平之助)で活写される中之島の南岸のたたずまい、そして人間模様である。これらは大阪への愛を語りながら、どこか突き放したところがある。冷徹なる距離感がいっそう、イメージに明証的な輪郭を与えている。 ひとり旅でふらりと大阪を訪れるたび、法善寺横丁の割烹「H」で、淡口のしっとりとした正統的な上方料理をたらふく堪能したあと、宗右衛門町あたりのショットバーでナイトキャップをやっていると、「人生というものは、生きるに値する」などと思えてくる。ところが、割烹の主人に言わせれば、「織田作や『ぼんち』の豪気な遊びの世界は、もう現在の大阪にはない、大阪人が本当の遊びをするためには、東京か京都に行くしかない、料理を盛る器をさがすにしても大阪ではまったくお話にならない」というのである。どう反応してよいやらむずかしいところだ。 私のごとき田舎者の感傷的な疑念に、じゅうぶんに応えてくれている大著が、心斎橋出身の美術史家・橋爪節也編著による『大大阪イメージ 増殖するマンモス/モダン都市の幻像』である。《好きやねん大阪》などといったえげつないスローガンとは根本的に異なる大阪についての、考古学的または考現学的な詳細報告である。「金勘定ばかりで、文化が育たない」という大阪の紋切型イメージが、本書によってすこしでも払拭されるのではないか。こんなことを言うと、「金勘定のどこが悪いん?」と友人からは押し返されそうであるが。
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