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ヒルベルという子がいた 現代の翻訳文学
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ヒルベルという子がいた 現代の翻訳文学

ペーターヘルトリング【著】, 上田真而子【訳】

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ヒルベルという子がいた 現代の翻訳文学

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 偕成社
発売年月日 1978/09/01
JAN 9784037260309

ヒルベルという子がいた

¥1,430

商品レビュー

4.3

10件のお客様レビュー

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2024/08/02

施設で暮らすヒルベルを描いた作品。ヒルベルは仇名で、ドイツの人が聞くと、脳が渦を巻いているような印象をもつそう。 そのとおり、ヒルベルは喜びも悲しみも人一倍大きいみたい。何かあるとうなり、叫び、ときに攻撃する。 そんなヒルベルは、周りから疎まれ、恐れられ、やっかいもの扱いされて...

施設で暮らすヒルベルを描いた作品。ヒルベルは仇名で、ドイツの人が聞くと、脳が渦を巻いているような印象をもつそう。 そのとおり、ヒルベルは喜びも悲しみも人一倍大きいみたい。何かあるとうなり、叫び、ときに攻撃する。 そんなヒルベルは、周りから疎まれ、恐れられ、やっかいもの扱いされている。マイヤー先生だけがよき理解者。だけど、受ける愛情が絶対的に不足しているようだ。 障害としては自閉症のような症状なのかな、それに頭痛が加わっていてつらそう。でも心底心配して、そのつらさを受け止めてあげられる人が不在。ヒルベルは「家庭」に憧れている。「愛」に飢えているのだと思う。その飢えを、いろいろな「問題行動」で表しているのかもしれない。 病院に連れて行かれたヒルベルのその後が気になる。でもむしろ、ヒルベルと同じような境遇の子に目を向けてほしいという著者のメッセージが感じられる。「ヒルベルという子がいた」という過去形のタイトルからも、それは感じられる。 現代でも多くの人から見過ごされているようなヒルベルの存在を、心にポトンと印象的に残されるような作品。でも決して批判調でなく、冷酷な物語としてでなく、ヒルベルのユーモアや賢さに、周りの大人たちー読者もーが目を見開かれていくような作品だった。そこがすばらしかった。

Posted by ブクログ

2024/05/10

生まれつき脳に障害を持ったヒルベルという少年。ヒルベルの施設での生活が描かれている。巻末に付録で取り付けられていた河合隼雄さんの解説がとても参考になった。 常識的に生きている多くの大人にとって、子供の行動は、大人にとって都合が良い、良い子の行動か、都合の悪い「悪い子」の行動かの2...

生まれつき脳に障害を持ったヒルベルという少年。ヒルベルの施設での生活が描かれている。巻末に付録で取り付けられていた河合隼雄さんの解説がとても参考になった。 常識的に生きている多くの大人にとって、子供の行動は、大人にとって都合が良い、良い子の行動か、都合の悪い「悪い子」の行動かの2種類にジャッジされがちだ。しかし、純粋に生きている子供は、いろんな感情や考えを経て一つの行動に至る。それはただの善悪で捉えられるべきではない複雑ものかもしれない。そして、一つの行動に至るまでのその子の思いをどう受け止め反応するかで、子供が次に取る行動は変わってくる。 この本でヘルトリングが言いたい事は、なんとなく心に刺さったし、隼雄さんの解説もなるほどと思う。しかし、実際の普通校の教育現場に、ヒルベルのような行動を取る子がいたら、周りの教員や子供たちは疲弊してしまうだろう。実際にそういうことが起こっていると耳にする。担任の教員は、1人の子にかかりきりになるわけにはいかないから、支援員に任せきりになり、その子が学校を抜け出したら、担任をしていない先生達がその子を探しかけ回る。捕まえようとした先生は、その子に暴力を振るわれることもある。でも学校は公にはできない。 そんなことが度重なると、やはり人の心はそう余裕が無いので、その子を悪とみなすようになる。今の学校現場は、このようなことが日常茶飯事のようだ。誰が悪ということではない。だけど、どうかしないと、みんなが、学校教育が破綻してしまう。一体どうしたらいいのだろう。放課後のデイサービスばかり目につくようになったが、学校にいる時間の対策が追いついていない。 ヘルトリング著の『おばあちゃん』の訳者あとがきに示されていた、ヘルトリングが児童書を書くにあたり心していることの五点の中の、【ファンタジーを損ない、夢をしめだすことなく】現実を子どもたちに知らせることが必要であるという一節が、河合隼雄さんの書評に改めて書かれていた。この本を読んだあと、この心がけを改めて読むと、深く納得が行く。 多くのことを受け止める大きな器がより必要になってきている時代なのに、それに反して人間の器は小さくなってきているのを感じる。自分自身もそうだ。せめて読書から少しでも何かを感じとって肥やしにしなければと思う。

Posted by ブクログ

2021/10/07

私にはきっとヒルベルと実際に出会っても彼を理解して愛することは難しいのだと思う。 何度も読んで、彼を心から理解してくれない大人に苛立ったりもした。友人になってあげない子供にも説教をしたくなった。けれど、私が放つ言葉では彼を孤独から守るなんてことはできないし、そもそもそんな考えこそ...

私にはきっとヒルベルと実際に出会っても彼を理解して愛することは難しいのだと思う。 何度も読んで、彼を心から理解してくれない大人に苛立ったりもした。友人になってあげない子供にも説教をしたくなった。けれど、私が放つ言葉では彼を孤独から守るなんてことはできないし、そもそもそんな考えこそヒルベルが嫌ってるのだとも思う。 それでも私はこの本に出会えて、同じような子供たちがいて、理解されない苦しみが現在も続いていると知り、考えさせられたことに喜びたい。出会えてよかった。 これからの人生において自分が大人側に立った時、ヒルベルを思い出さなければいけないと心から思った。

Posted by ブクログ

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