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全体主義の起原(2) 帝国主義
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | みすず書房 |
発売年月日 | 1972/12/15 |
JAN | 9784622020196 |
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全体主義の起原(2)
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商品レビュー
4.2
5件のお客様レビュー
帝国主義とあるが、ヨーロッパ外として例があがっているのははイギリスによる南アフリカへのダイヤモンドや金鉱山として外要なものである。 全体の帝国主義ではなく、ユダヤ人を中心として帝国主義がどのように作用したかということが中心に述べられている気がする。 ユダヤ人と帝国主義について...
帝国主義とあるが、ヨーロッパ外として例があがっているのははイギリスによる南アフリカへのダイヤモンドや金鉱山として外要なものである。 全体の帝国主義ではなく、ユダヤ人を中心として帝国主義がどのように作用したかということが中心に述べられている気がする。 ユダヤ人と帝国主義についてのテーマで卒論を書く場合には基本書の一つであろう。
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「全体主義の起源」の第2巻「帝国主義」。 「ユダヤ人」問題を論じた第1巻に比べると、世界史で勉強したこととか、どこか他で読んだことなどとのリンクをつけやすく、読みやすくなって来た感じかな? まずは、帝国主義の政治経済的な流れをおさえつつ、社会心理というか、精神史みたいなところ...
「全体主義の起源」の第2巻「帝国主義」。 「ユダヤ人」問題を論じた第1巻に比べると、世界史で勉強したこととか、どこか他で読んだことなどとのリンクをつけやすく、読みやすくなって来た感じかな? まずは、帝国主義の政治経済的な流れをおさえつつ、社会心理というか、精神史みたいなところに踏み入る。これは、第1巻の「反ユダヤ主義」と同様の流れで、1巻と同様に、「闇の奥」とか、文学の分析などを踏まえた社会心理的な側面の切り込みの冴えがひかる。 そして、後半は、人種主義、官僚主義、大陸帝国主義、汎民族主義が絡まりつつ、人権思想の崩壊を伴いながら、全体主義になだれ込んでいく。ここは、息がつまるような迫力、説得感がある。 第1巻を読んでいたときは、全体主義って、ナチスとスターリンのことなのに、どうしてフランスの話が多いのかな?なんて思っていた。第2巻でも、最初の方はイギリスの話が多いな〜、と素朴に思っていたのだが、ここまで読み進むと、もうその意図は明確である。 アーレントは、全体主義は、ドイツだけの問題ではなくて、ヨーロッパ全体の社会経済システム、つまり資本主義、国民国家システム、人権思想などなどの構造的な矛盾が生み出したものと考えたのだ。 ここまでで、もう「全体主義の起源」が見えて来た気になっているのだが、あともう一冊、本丸の第3巻「全体主義」が残っている。 どういう展開になるんだろう?
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1巻は反ユダヤ主義という、私たちにとってさほど関心のない分野での、近代ヨーロッパ史のひどく錯綜した記述であったため、ちょっととっつきにくい感じがしたのだが、この2巻はヨーロッパの「帝国主義」を扱うので、俄然面白くなった。 ここでは帝国主義というのは、明確に1884年頃から1914...
1巻は反ユダヤ主義という、私たちにとってさほど関心のない分野での、近代ヨーロッパ史のひどく錯綜した記述であったため、ちょっととっつきにくい感じがしたのだが、この2巻はヨーロッパの「帝国主義」を扱うので、俄然面白くなった。 ここでは帝国主義というのは、明確に1884年頃から1914年と断言されている。 ヨーロッパの植民地主義じたいはもっと以前から続いていたのだが、「国民国家」体制(これはフランス革命のあたりから始まる、共和制的、主権在民的な政治体である)におけるそれと異なり、国家が膨張のための膨張を求めて植民地を支配するという、根底にあるものが「帝国主義」では新しい形態になっている、というのだ。 そのひとつの要因は、産業技術の急速な発展の結果、経済にアンバランスが生じると共に、産業はいっそう拡張するべく、あらたな需要を求めて国外領土を求めたということである。つまりこの時点で、経済が政治を突き動かすという逆転現象が始まっており、この経済主導の状態はもちろんこんにちまで続いている。 もう一つの要因は「氾民族主義」にあるが、これはちょっと事情がややこしい。アーレントはここを極めて細かく描写している。 民族主義的アイデンティティは、実は国家そのものとは相反する物だ、とアーレントは指摘する。それはナショナリズムとも国家主義とも違い、特に「人種」の入り乱れているヨーロッパにおいては、民族アイデンティティは国境を越えて拡大していくのだ。 そしてこの帝国主義を支えている行政官僚たちは、法を侮蔑する。ここに出現した官僚制は、法に従うというよりも、正体不明の権力が措定する「政令」に機械的に絶対服従する。 アーレントが本書で描出するのはドイツ、フランス、イギリス、オーストリア=ハンガリー、ロシアと広範囲にわたっており、膨大な文献渉猟に裏付けられた記述はすこぶる緻密である。 私たちがなんとなく抱いていたような、この時期のヨーロッパについての安易で単純なイメージを、本書は見事に覆してくれる。その点、これは優れた知的財産である。アーレントの歴史認識は、現在の歴史学から見れば間違っているところもあるのかもしれないが、ここまで徹底的に追究された政治史は、やはり価値を失うことはないだろう。 とりわけ、このヨーロッパ帝国主義の時代に関しては、現在の日本のネトウヨ安倍政権とも似たところが感じられて興味深い。島国日本の場合は民族主義とナショナリズムや国家主義の区別があまりつかず、ネトウヨイデオローグたちはひたすら「日本、日本」と叫んでいるだけなので、帝国主義時代のヨーロッパと比べてさえ、はるかに素朴で幼稚なのだが。 さてヨーロッパ帝国主義からたちあらわれ、個人の個人性(差異)を消滅させてしまった氾民族運動の流れは、次の段階で絶対主義へと流れ込み、「政党制」を崩壊させるだろう。 いよいよ第3巻は「絶対主義」をテーマとする。アーレントとの旅はいよいよ佳境である。
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