商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 集英社/集英社 |
発売年月日 | 1980/04/01 |
JAN | 9784087503159 |
- 書籍
- 文庫
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商品レビュー
3.7
10件のお客様レビュー
近ツリの社史を、前身の日本ツーリスト社長 馬場勇をメインにして描いた、いわゆる経済小説。著者の入念な資料調査と、機微な人間関係のタッチは良かったと思う。ただ個人的には、宮本常一と近ツリの結び付きについて、もう少し話が聞きたかったところではある。 観光研究の教科書では、往々にし...
近ツリの社史を、前身の日本ツーリスト社長 馬場勇をメインにして描いた、いわゆる経済小説。著者の入念な資料調査と、機微な人間関係のタッチは良かったと思う。ただ個人的には、宮本常一と近ツリの結び付きについて、もう少し話が聞きたかったところではある。 観光研究の教科書では、往々にして、「マスツーリズム」から「サスティナブル・ツーリズム」へなどと、短絡的な言葉遊びが展開されているが、かかる「マスツーリズム」の内実を細かに描出した本に出会ったことがなかった。本書は、戦後から70年代までの国内における旅行業事情、言い換えれば、当時のマスツーリズムの諸相をまざまざと見せつけてくれる一冊であった。 日本ツーリストは、兎にも角にも、事業拡大の道を歩んでおり、まさに青天井の如く事業所設立に力を入れている。企業理念も、企業戦略も何もない、只々、大量生産・大量消費の方式で、力をつけていった企業としても過言ではないだろう。他方で、このマス的な企業方針に傾倒していったのは、交通公社(JTB)に対するやっかみに依るところが大きかったものと思う。国営企業のJTBは、お上のお陰で潰れることはないし、営業の際に信用を勝ち取れる。また、国鉄との結び付きで、旅行商品を生産しやすかったという環境もある。国営企業であるJTBに打ち克つには、なるたけの馬力で、顧客を獲得せねばならない。「国営企業 vs 私企業」という構図のもとで、(負の遺産ともいえる)マス的な観光形態が形成されたのではないかと感じた。その意味で、JTBの功罪は大きいだろう。また、旅行業界の「ブラック化」が進んだのも、この「官民」の闘争の成れの果てとも言えそうである。まあ、近ツリが、社員の家族を巻き込んでまで事業を遂行していたという話は、ちょっと引いたものである。なお、大量生産・大量消費とは雖も、1970年代頃にはSITの兆しが見えていたようで(p. 207)、近ツリが、コンピュータを導入した管理運営を世界に先駆けて実施しているのは興味深い。 「観光」という言葉の使用が、近畿交通社に端を発している話(p. 127)、渡鹿野の置屋のはしりが、これまた近畿交通社であったという話(p. 120)、馬場が学閥を忌避していたにも拘らず、学生バイトは東大生ばかりを雇っていた話、日本ツーリストが「添乗員」経験を重視していた話など、知らない話が多く出てきた。 それにしても、近ツリのバイブルとなっているこの本を、現代の新入社員が読んだらどんな反応を示すのだろうか。過度な精神主義に傾注し、ブラック・パワハラを黙認・礼賛するようなこの本を読めば、現代人は委縮してしまうのではなかろうか。こんな武勇伝を延々と聞かされて、「お前らは甘えてる、俺の時はもっと大変だった!」などと叫ばれたら、もう一溜りもないし、さっさと辞めたくなるに違いない!
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こういうガツガツした感じはいいなあと思う。 近ツーの社史として書かれた割に、吸収した側の近畿交通社よりも吸収された側の日本ツーリストに焦点が当たっているのは、単純に依頼者が馬場副社長本人だから? 合併会社が軌道に乗り時が経つと、日本ツーリスト出身の役員はいなくなり、ベンチャーの名...
こういうガツガツした感じはいいなあと思う。 近ツーの社史として書かれた割に、吸収した側の近畿交通社よりも吸収された側の日本ツーリストに焦点が当たっているのは、単純に依頼者が馬場副社長本人だから? 合併会社が軌道に乗り時が経つと、日本ツーリスト出身の役員はいなくなり、ベンチャーの名残がなくなっていくのは残念なようではあるけれど、多かれ少なかれどこの会社も同じようなもので、結局のところ会社は公器なんだなあと思う。
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近畿日本ツーリストの創業者、馬場勇。 社史を基にした戦後企業の物語。 戦前戦後のこの辺りの起業した男たちの物語は熱いね。現代の日本企業の礎を築いてきたその変遷は、熱っぽくて良い。 戦後の荒廃と混乱の中で、資力もバックも、信用もないが、先見性と野武士的勇断を武器に、新しい世界...
近畿日本ツーリストの創業者、馬場勇。 社史を基にした戦後企業の物語。 戦前戦後のこの辺りの起業した男たちの物語は熱いね。現代の日本企業の礎を築いてきたその変遷は、熱っぽくて良い。 戦後の荒廃と混乱の中で、資力もバックも、信用もないが、先見性と野武士的勇断を武器に、新しい世界"旅行代理店業"に切り込んでいった男の集団。 たった数人で立ち上げた小さな会社から、ここまでの企業にするには、その情熱は凄まじい。 経済小説は、今だと池井戸潤氏あたりが流行っているが、その先駆けである昭和一桁代生まれの城山三郎氏のそれは、どれもいつ読んでも古さを感じさせず、滾るものがあるな。
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