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ピカレスク 太宰治伝 文春文庫
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ピカレスク 太宰治伝 文春文庫

猪瀬直樹【著】

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ピカレスク 太宰治伝 文春文庫

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 文藝春秋/文藝春秋
発売年月日 2007/03/10
JAN 9784167431136

ピカレスク 太宰治伝

¥817

商品レビュー

3.8

20件のお客様レビュー

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2021/08/12

 ちくま文庫の『太宰治全集』1巻を読んだとき、どの作品も太宰自身のことが書かれているようにしか思えなかったので、どこまでが実話なのかを知りたくなりました。そこで、太宰治自身の人生を知っておきたいと思い、何かいい本がないか探してみようと思っていたら、なんと本棚にこの文庫の背表紙が!...

 ちくま文庫の『太宰治全集』1巻を読んだとき、どの作品も太宰自身のことが書かれているようにしか思えなかったので、どこまでが実話なのかを知りたくなりました。そこで、太宰治自身の人生を知っておきたいと思い、何かいい本がないか探してみようと思っていたら、なんと本棚にこの文庫の背表紙が! うああそうだったあたしこれ買っといたんだ、と、驚いて手に取りました。はい、すっかり忘れてたんですこの本がうちにあることを。本当に偶然、タイムリーに背表紙がパッと目に入ったので、導かれたとしか思えません。すぐに読み始めました。  まず序章、太宰治の死、玉川上水での心中事件から始まります。最初に異変を感じたのは誰で、二人の遺体を発見したのは誰で、どのように知らされていったか、騒然とした雰囲気が伝わってきます。そして、屑籠から見つかった遺書の下書きにあった「井伏さんは悪人です」の文字。「井伏さん」とは、井伏鱒二氏のこと。太宰の死には謎が多いのですが、この一文も謎のひとつです。これらの謎は解明されるのか、太宰が生涯に起こした4件の自殺未遂事件を中心に、評伝が展開されていきます。  とても興味深く読みましたし、いろいろな勉強になりました。青森の実家との関係や家族の状況、太宰と関わりのあった女性たち、当時の文壇の様子、世間の潮流、そして戦争。井伏鱒二をはじめとして、菊池寛、佐藤春夫、横光利一、川端康成、檀一雄、中原中也といった名だたる文豪たちも登場し、芥川賞、直木賞ができた経緯はもちろん、太宰がいつどのような由来で「太宰治」というペンネームを使うようになったか、どの作品がいつどのように書かれたのかなど、深く知ることができました。自分が読んだ作品がどういう経緯で書かれたのかわかるとうれしく、改めて再読したくなります。また、全集の続きを読むのがさらに楽しみになりました。  ちなみに、太宰のことを知りたくて本書を読み始めましたが、井伏鱒二についてもよく知ることになりました。「終章」から「増補」は、まるまる井伏氏の「悪人」っぷりが披露されています。私は本書を読んで、井伏さんは、人から何か頼まれるとイヤと言えない、人の良い優しいおじさまなのだろうと思ったのですが、そこが文学者としては厳しくツッコまれる原因になってしまったのかなぁと感じました。さまざまな資料、さまざまな意見があるにしても、井伏氏の作品がここまで「名作」として読まれ続けているのにはそれなりの理由があると思うので、私が井伏氏の作品を読むときは、純粋にひとつの文学作品として味わおうと思っています。

Posted by ブクログ

2018/02/06

俗世間に受け入れられない孤高の芸術家として太宰を免罪するのではなく、一人の悪党として描くことを目指した作品らしい。 そこで描かれる太宰は、生きようとする人間としての彼。 繰り返される心中は、死ぬつもりはなかった。 たしかに、言われてみればそうだったのかもしれない。 最後の心中さえ...

俗世間に受け入れられない孤高の芸術家として太宰を免罪するのではなく、一人の悪党として描くことを目指した作品らしい。 そこで描かれる太宰は、生きようとする人間としての彼。 繰り返される心中は、死ぬつもりはなかった。 たしかに、言われてみればそうだったのかもしれない。 最後の心中さえそうだった。 山崎富栄の実行力の高さゆえに成功してしまった、となると、ちょっと山崎さんが浮かばれない気がするが。 研究者をはじめ、太宰に甘い。 そんな話を、実は太田治子さんの講演で聞いた。 『明るい方へ』の刊行記念の講演だ。 戦争協力の姿勢、そして自分に近づいてきたファンの原稿をリライトして自分の作品にしてしまうことについて。 こんなところが、聞いていて驚くほど厳しく批判されていたのだ。 戦争協力のことはさておき、剽窃については、この作品でも大きなテーマになっている。 そして、むしろ悪党として浮かび上がってくるのは、太宰の師に図らずもなってしまった、井伏鱒二である。 『青ヶ島大概記』を、太宰に代筆させたこと、直木賞をとった『ジョン万次郎漂流記』も、種本の石井研堂『中浜万次郎』をかなり引き写したこと、そして、名作『黒い雨』も、『重松日記』のリライトであることが明かされる。 丹念に調べ上げる猪瀬さんの手法そのものが、ろくに調査もしないで創作する作家たちを厳しく指弾しているかのようだ。 そう、本書では、太宰の遺書にある、あの有名な「井伏さんは悪人です」の意味も、猪瀬流に解いて見せる。 個人的にはその説に納得しづらいけれど、こういう発想もあるのか、と驚かされた。 この本で知った事実も多い。 例えば、太宰がほとんどフランス語を学んでいなかったこと。 仏文科だし、これ見よがしにエピグラフにフランス文学を引いて見せるから、できるのかと思っていた! 私の半生、騙されてたのね(笑) さすが太宰。

Posted by ブクログ

2016/12/26

「あとがき」で著者は、「死のうとする太宰治ではなく、生きようとする太宰治を描きたかった」と書いているように、文学的な成功を望み悲喜劇的な振る舞いを繰り返す太宰の姿を描き出しています。太宰治の作品に登場する人物の自意識のねじれ具合は、現代の小説の登場人物たちに通じるようなところがあ...

「あとがき」で著者は、「死のうとする太宰治ではなく、生きようとする太宰治を描きたかった」と書いているように、文学的な成功を望み悲喜劇的な振る舞いを繰り返す太宰の姿を描き出しています。太宰治の作品に登場する人物の自意識のねじれ具合は、現代の小説の登場人物たちに通じるようなところがあるように感じていたのですが、著者はそうした彼の内面に共感を寄せるのではなく、かなり距離を置いて観察しているような印象を受けます。 文庫版カバー裏の解説文に「傑作評伝ミステリー」とあるように、ドキュメンタリーな構成で太宰治の生涯をたどっており、読み始めるとページを繰る手が止まらなくなります。 文庫化に際して付け加えられた「増補」には、井伏鱒二の『黒い雨』の種本となった『重松日記』の刊行時に著者が書いた文章が加えられています。作家として生きるということは、井伏にとっては他人を欺くことであり、太宰にとっては自分を欺くことだったのかもしれません。

Posted by ブクログ

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