商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 中央公論新社/中央公論新社 |
発売年月日 | 2006/10/10 |
JAN | 9784120037740 |
- 書籍
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ガイアの復讐
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ガイアの復讐
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3.8
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ガイアの復讐 1960年代にラブロック氏によって提唱された「ガイア理論」は、そのメタファーの適切さと環境問題の流行によってカウンターカルチャーの大きな柱となりました。この本の前半に書かれているように、こういった流行の1つに祭り上げられてしまった「ガイア理論」は胡散臭い擬似科学として不当に扱われてきました。今、世界的な気象観測網の整備や複雑系の研究成果、精緻なシミュレーションモデルや高速なコンピューターなどによって科学的な裏付けを伴って「ガイア理論」が再び注目されるかもしれない状況になってきたと感じています。 大学生の頃に「ガイア」を読んだ際には、なるほど面白いことを考える人もいるもんだという感想を持っていました。その当時、ラブロック氏は人類の環境破壊などは「ガイア」の自己調整機能によって修復されるため大きな問題ではないとの認識を持っていたと思います。大学生だった竹蔵ももうこんな年(こんな年ってどんな年だ?)になってしまうほど年月が経ちました。年々増える人口に対応するため、環境破壊は加速度を増し、もう既に「ガイア」の自己調整機能を脅かすまでに「ガイア」を痛めつけてしまったとラブロック氏は認識を変えています。 ブラックホールに引き込まれる限界点のことを「事象の地平」と言うそうですが、「ガイア」の環境変化は「事象の地平」を超えてしまったかもしれないというのが「ガイア臨床医」のラブロック氏の所見です。世界的な気温の上昇、二酸化炭素の増加は多くの科学者が考える気候激変のレベルに達しつつあるようです。超大型ハリケーンの多発、北極・南極の氷の氷解、干ばつによる農作物の大きな被害。二酸化炭素濃度が500ppm以上となると平均気温が5度上昇し、海面上昇によって植物の量が激減することと、海水温度が上昇し藻類が死滅することによる温度上昇の正のフィードバックによって、ほとんどの生命が死滅するというシナリオが紹介されています。NHKのドキュメンタリーで日本の地球シミュレータが南米の今までハリケーンが発生しなかった地域でのハリケーンの発生をシミュレーションによって予見したことを知り、それだけ精緻なシミュレーションモデルを構築できていることに驚いた記憶があります。気候モデルを使ったシミュレーションでも悲惨なシナリオが確認されつつあるようです。 「ガイア」はそうなる前に、気候の大変動という方法で自己調整機能を発揮し、人類のほとんどを排除するだろうというのがラブロック氏の描くシナリオです。今はやりの持続的成長は空絵ごとだと説きます。走っている列車を急に止めることはできません。動力が止まっても(二酸化炭素の排出量が0になっても)慣性で列車は動いて、谷底へと進んでいきます。さらに人は愚かなので、どこぞの国の借金のように破滅するまで大なたをふるうことはできないでしょう。それと同様に、人類は大きな対応を取ることができないまま、気候が大変動して水害や干ばつによって多くの命が失われて、人類が「ガイア」の環境にとって無害な数に減るまで二酸化炭素の排出は止まらないでしょう。 ラブロック氏は原子力エネルギーへの全面的な切り替えや牧畜・酪農などのエネルギー効率の悪い食料生産の中止などの提言をしていますが、それが実現されても人類を満載した列車のほとんどは谷底に転落してしまうだろうと予想しています。 ノストラダムスの予言は何事もなく終わりましたが、「ガイアの復讐」は多くの科学的裏付けを伴いながら着々と進行し、既に「事象の地平」を超えてしまったかもしれません。このシナリオにハリウッド映画のようなハッピーエンドはないようです。 ディープインパクトという映画がありました。隕石が地球に衝突して大津波が大都市を襲うという内容でした。その中で、逃げまどう人とは対照的に、仲違いを克服した親子が大津波を前にお互いに手を握るという場面があります。伊坂幸太郎氏の「終末のフール」にも、人類絶滅前に穏やかな希望を持った暮らしをする人が出てきます。最悪のシナリオが現実になった場合でも、竹蔵はせめて慌てず騒がず”楽しいて幸せな一生だったなあ”と笑っていられるような毎日を積み重ねられたら良いなと思っています。 竹蔵
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環境学者でもある英国のクリスピン・ティッケル卿が、本書の序文で、以外のようにコメントしている。これは、まさにジェームス・ラブロック博士のガイア思想に根ざして、地球と人類の置かれた状況を的確に捉えている。 ↓ 人類はあまりにも数が増えすぎて、地球にとって病気のような存在になってしま...
環境学者でもある英国のクリスピン・ティッケル卿が、本書の序文で、以外のようにコメントしている。これは、まさにジェームス・ラブロック博士のガイア思想に根ざして、地球と人類の置かれた状況を的確に捉えている。 ↓ 人類はあまりにも数が増えすぎて、地球にとって病気のような存在になってしまった。そのため、地球はかなりの機能障害に陥っている。人間の病気と同じく、その結末には4種類のケースが考えられる。侵入してきた病原体の撲滅、慢性的な感染状態、宿主の死、そして共生である。共生が成立すれば宿主にも侵入者にも相互利益のある長続きする関係が保たれる。
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地球それ自体が大きな生命体という感覚は、 確かに日本人には受け入れやすい気がする。 山川草木悉皆仏性 ということに限らず、なんにでも命が宿ると取る感性があると思う。 ガイアという考え方と原子力推進は一件相反するように思われがちかもしれないが 非常に理に適った合理的な考えだ。 自分自身は原子力に反対派ではあるものの、現時点では原子力という選択肢しか無いと思っており、その理由としては本書の考え方と近い。 『エコ』は科学技術を捨て去れば良いというものではない。 火力発電は効率が悪く環境に非常に悪い。 たとえば洗剤を悪だと決めつけて、洗剤なしで皿を洗うにあたり水を大量に使うことが果たして本当に環境のためになっているのか、という話である。 ゴドーを待つ余裕の無い瀕死のガイアに対して”薬”を用いて時間稼ぎをしつつ治療を行うというのは納得がいく考え方だった。 最近の中身の無いサスティナブルやSDGsには辟易としている。 まったく、政治用語や単なるアピールとしてしか使われていないと思う。 ”ほぼすべての人間は、日常生活を送る過程でガイアの破壊に従事している。毎日、毎時だ。” という言葉は非常に簡潔に重要な事実を言い表していると思う。
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