商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 文藝春秋/ |
発売年月日 | 1988/09/10 |
JAN | 9784167436025 |
- 書籍
- 文庫
風の家
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風の家
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いわゆるダブル不倫の物語。 突然妻と子どもを捨てて出奔し異国の遠い島に行ってしまった男と、男を追いかけ自らも夫と子どもを捨ててしまった女。 逃避行を遂げた男女は熱く愛し合うはずだったが、そこには新たな地獄が待ち受けていた。 家族がある男と女が愛し合って不倫がスタートする、その一...
いわゆるダブル不倫の物語。 突然妻と子どもを捨てて出奔し異国の遠い島に行ってしまった男と、男を追いかけ自らも夫と子どもを捨ててしまった女。 逃避行を遂げた男女は熱く愛し合うはずだったが、そこには新たな地獄が待ち受けていた。 家族がある男と女が愛し合って不倫がスタートする、その一番気持ちが盛り上がっている状態の時の描写は一切なく、それぞれに出奔しどこだか分からないような島で再び出会った二人は、日本で愛し合っていた時のような再スタートを遂げることは出来ない。 先に島に居着いた男は日本とは違いすぎる島の不便で清潔とは言えない暮らしを分かってしまっていて、そこに女が来たところでいずれ嫌になることは簡単に予測出来る。 再会した時の男の微妙な態度、そしてそれに気づいた女が男に対して感じたこと。違和感。すれ違い。それがとてもリアルで、熱く盛り上がる不倫の物語よりもよほど現実的だと思った。 道ならぬ恋って現実にもあるし小説や映画にもよくなるけれど、安全で清潔な暮らしが担保されているからこそ成り立つのかもしれない。 道ならぬ恋に限らず普通の恋愛でも、環境が変われば気持ちも変化してすれ違いやいさかいが始まるのはよくある話だし、気持ちだけではどうにもならない、というのはとても大きい。 森瑶子さんは不倫をテーマにした小説を多く書いているけれど、この小説は、現実すぎていたたまれない気分になる物語だった。 主人公二人以外の周りの人間たちも、聖職者でさえ欲をむき出しにしていて、自分の気持ちに忠実すぎることの醜さが却って清々しくさえある。 熱から醒めて我に返った時周りを見てももう遅い。そういうことって、実際にもある。
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