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稲の旋律
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稲の旋律

旭爪あかね(著者)

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稲の旋律

1,980

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 新日本出版社/
発売年月日 2002/04/20
JAN 9784406028783

稲の旋律

¥1,980

商品レビュー

4.4

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2023/09/07

初出:『しんぶん赤旗』2001年9月21日から2002年2月28日まで連載。 初刊:新日本出版社、2002年4月20日 ミニマルストーリー 親からの期待のために、失敗する自分を認めることができなかった藪崎千華が、自らの存在を肯定できるようになる物語。 全編が書簡体で構成されて...

初出:『しんぶん赤旗』2001年9月21日から2002年2月28日まで連載。 初刊:新日本出版社、2002年4月20日 ミニマルストーリー 親からの期待のために、失敗する自分を認めることができなかった藪崎千華が、自らの存在を肯定できるようになる物語。 全編が書簡体で構成されている長編小説。書簡の書き手は、大学を中退しその後勤めた会社をクビになり家にひきこもっている主人公藪崎千華、千華が田んぼの水面に託した「SOSの手紙」を拾った農業従事者広瀬晋平、自身の出自や夫・子との葛藤を抱える千華の母親、の三人。 本文引用 p28 とはいえ、稲や野菜を育てていて日々痛感させられるのは、理由や原因がわかったからといってそれを予防できるものとはかぎらない、ということです。僕たち百姓が何百人力を合わせても、台風を止めることはできませんから。だから時には、しょうがないや、とあきらめることも必要になってきます。藪崎さんも、他人と会って緊張するのはしょうがない、と、まずそこを前提にしてみてはどうでしょう。 p44 でも、農業高校を卒業されて後、ずっとご家族と農業に従事してこられた広瀬さんが、自信を持って、誇りに満ちて、いろいろなことを農作物になぞらえて説明してくださっている箇所を読んだとき、はっとしました。そして思ったのです。私はこんなふうに、何かを考えるときにひきくらべることのできるような自分自身の経験、基準にし得る独自のものを持っているだろうか、って。 p53 僕も、自分のなかに、ちっぽけではあれ「核」があるはずだと自負しています。けれどそれは、美しいもの、立派なものだけから形成されているわけではありません。新しい作物を作ることに挑戦して失敗したり、台風で実った稲が全滅してしまったり、むしろ、悔しいこと、がっかりすること、情けないことの集合体だといってもいいぐらいです。 p116 それは、ひとつは、(自分はちっぽけな存在なんだ)という感覚でした。田植え機の運転に失敗して、広い田んぼの真ん中で転がっている自分。まわりの人たちに大笑いされている自分。格好悪い、優等生でもなんでもない、ただの小さな自分です。 p116 もうひとつは、矛盾して聞こえるかもしれませんが、(自分の存在は、たしかでがっちりしている)という感覚でした。泥のなかに転がっても、私はまったく壊れなかった。平気でした。身体からも心からも、何ひとつ失われることはなかったのです。 p117 「なあーに、曲がって植えようが転んで植えようが、稲は真っ直ぐ上向いて伸びるだよ」 p121 昔からこの辺りに伝わる諺に、「薄田も千石、厚田も千石」というものがあります。苗と苗との隙間を大きく空けて田植えをした田んぼ(薄田)も、株間を狭くしたり一ヶ所に植える苗の本数を増やして密植した田んぼ(厚田)も、そこから穫れる米の収量にそう変わりはない、という意味です。 p131 そして、身体や心の調子がよくなくてとても八十や九十などめざせないとわかっているとき、それならゼロよりは一か〇・一までやっておこう、と考えを転換すると、ずいぶん気持ちが楽になりますよ(この場合、「一か〇・一まではやったんだ」とその点で自分をしっかり評価してやることが重要です)。 p150 〈仕事が忙しすぎるときやうまくいかないとき、これを浮かべてお風呂に入ります。眼をつぶって、仕事のことは何も考えないようにして、ゆっくりゆっくり暖まります。頭と身体がリラックスするにつれ、だんだんに、明日はもう少しうまくやれるかな、という気分が湧いてくるんです。よかったら、千華ちゃんも試してみてください。香りも楽しんでね〉 p174 「帰りの運転め頼みますよ。落ちたらまた引き上げればいいんだから」 堀川さんの頬は、ようやくうっすらと紅潮してきました。全部任せて、失敗したらこんどはやり直す機会を与えてくれる。それが晋平さんのやり方です。 p175 晋平さん。私はあの赤いトラクターに「アンダンテ」という名前をつけました。演奏の速度を表す音楽の言葉で、「歩く速さで」という意味です。 p192 どうして人は、知らず知らず、誰かや何かをひとつの決まった形に押し込めようとするのでしょうか。どうしてそういう形に育たなかったら、そのものの価値や値段は下がってしまうのでしょう。私もこれまで、スーパーの野菜売場でナスやキュウリを見るたびに、ああいうふうに大きさの揃った、真っ直ぐなものがふつうの姿なんだと思っていました。

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2021/10/01

ピアノが上手で優等生だった30歳の引きこもりの千華。農業青年晋平との交流を通して農業に触れ、行きつ戻りつしながら生きる力をつけていく。 草色の若い稲が風にそよぐ様にパッヘルベルのカノンを感じ、水を張った田んぼに夕陽が映る光景に、ゴルドベルク変奏曲を重ねることにすごーく共感。光景を...

ピアノが上手で優等生だった30歳の引きこもりの千華。農業青年晋平との交流を通して農業に触れ、行きつ戻りつしながら生きる力をつけていく。 草色の若い稲が風にそよぐ様にパッヘルベルのカノンを感じ、水を張った田んぼに夕陽が映る光景に、ゴルドベルク変奏曲を重ねることにすごーく共感。光景を思い浮かべながら曲を聴いちゃいました。 でもこれが「田舎暮らしに癒される」っていうありがちな話ではなく、農政に米作りが翻弄されてきたこと等も分かりやすく織り込まれ、うまくいかなかったこともしっかり描かれています。 また、千華にとって自分を圧してきた存在である母がなぜ農業を嫌うのかも見えてきて、でもやっぱり互いの生き方を分かり合えなくて・・・と、いろんなテーマが詰まっています。 そして予定調和ではない、思いがけない展開があり最後まで引き込まれて読み進めました。 往復書簡ということで敬遠していたのですが、読みやすく沢山の人にオススメしたい一冊です。

Posted by ブクログ

2012/07/29

若い女性のひきこもりをテーマにした話。 ひきこもりの問題にどう向き合うかという話でなく、むしろ社会の中での自分の立ち位置を見失い戸惑う人すべての人に当てはまる問題だと思う。 社会から取り残され追いつけないでいる疎外感を覚える人は、引きこもりという形をとらずとも多いのではないだろ...

若い女性のひきこもりをテーマにした話。 ひきこもりの問題にどう向き合うかという話でなく、むしろ社会の中での自分の立ち位置を見失い戸惑う人すべての人に当てはまる問題だと思う。 社会から取り残され追いつけないでいる疎外感を覚える人は、引きこもりという形をとらずとも多いのではないだろうか。 農業の現代的問題点の記述が多くなってしまって、その点が気になるけれど、自然とともに生活することで、自分を取り戻してゆく話なので仕方ないかなとも思う。 いかに、自分の足元を見て自分のペースで生きるか。 それが、今の社会の中で自分を見失わない生き方につながってゆくのかなとも感じた。

Posted by ブクログ

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