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風魔 愛蔵版忍者旋風シリ-ズ
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 小学館 |
発売年月日 | 1996/02/29 |
JAN | 9784091973696 |
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風魔
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風魔
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「忍者旋風シリーズ」の最終章第3部である。ちなみに、白土三平から階級闘争を学ぼうというのは無駄である。白土三平のマンガは教科書ではない。その意味では、闘争を指導する力はない。しかし、白土三平に思想性がないかどうかは、保留しなくてはならない。 ある人物の思想性を問う時に、私はふた...
「忍者旋風シリーズ」の最終章第3部である。ちなみに、白土三平から階級闘争を学ぼうというのは無駄である。白土三平のマンガは教科書ではない。その意味では、闘争を指導する力はない。しかし、白土三平に思想性がないかどうかは、保留しなくてはならない。 ある人物の思想性を問う時に、私はふたつの条件があると思う。 (1)首尾一貫とした主張があるか (2)社会に大きな影響力をもっているか だから、学者や哲学者だけが「思想家」と言われるわけにはならないのである。むしろ、文学者にも思想性はあると言われている。また、いくら社会的影響力をもっていたとしても、清水幾太郎や竹中平蔵を思想家とは、私は呼ばない。 文学の役割は何か。 それは加藤周一に言わせると「価値観の変換を促す」ということである。 もし、60年代に大きな影響力を持った白土三平のマンガに、その力があったとすれば、白土三平の思想は、(私は首尾一貫とした主張があると思っているので)思想性があると言っていいだろう。 風魔一族は「全国の忍びの生活と権利を守るための」組織(忍び集団)であり、すべての忍びの個人や集団は、風魔に届けを出すことになっているらしい。 言うまでも無く、これは50年代から60年代にかけての労働組合運動のカリカルチャ化である。もっとも、日本の労組は一つの職業を横断する方式の労働組合を遂に作ること能わず、会社個々で独立してしまった。言うなれば、ここにはあるべき労組運動の姿を見せているようにも思う。公儀隠密の半蔵の風魔切り崩しと戦うなかで、スパイや様々な陰謀が飛び交うのが、この本の内容だ。 この中で、公儀隠密側の犬山半蔵は、偽風魔を作り上げ、そのもの達が風魔らしからぬ所業をすることで、風魔としての信頼を失脚させる作戦をとった。このモデルは戦後間も無く起きた下山事件その他の事件だろう。真田忍群や四貫目たちは「もはや風魔は忍びをまもる結社では無くなっていることじゃ」「われら仲違いしてるどころでは無いぞ」「全国の忍びに回状を回し風魔を糾弾しようぞ」(260p)と風魔を見限りそうになる。 実際の日本でも、これらによって労働組合運動は様々に分裂し、さらに国民の支持も失った。日本の支配層は、それを利用してきた。マンガはそのような当時の情勢に対するアンチテーゼを打ち出す。風魔たちは、実は最初から対策をとっていて大逆転を示すのである。そういう見事なドラマトゥルギーが読者に受け入れられれば、世の中に「価値観の転換」は起きたかもしれない。ただ、少年雑誌にそこまでの力を期待することは、そもそも客観的に無理。よって、青年誌を舞台に白土三平はカムイ伝を始めたのかもしれない。 しかし、ドラマは別の要素もあった。最後の最後で、支配層の優秀なコマだった忍犬シジマが、主人の半蔵を裏切るのである。上司のあまりものブラック振りに反旗を翻したのである。そして、そのあとにそれを知らなかった風魔一族によって念のために殺される「ラスト」。これは、さすがの白土三平と言わざるを得ない。これによって、この作品は、読んだ日本人がこの作品の中の「労働組合運動や階級闘争の話は覚えていなくても」(←なぜならば現実日本を見るとリアルではないから)決して忘れることの出来ない作品に変貌した。あれから50年経った現在、忍者旋風シリーズを通しての実際の主人公は風魔小太郎なのに、彼よりも遥かに有名なのは忍犬シジマになってしまっている。日本人の判官贔屓という「思想性」は、それほどまでに強いのである。
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