夢見るミノタウロス

スティーヴンシェリル(著者), 峯村利哉(訳者)

• 販売会社／発売会社: 角川書店/
• 発売年月日: 2005/02/28
• JAN: 9784047914964

商品レビュー

2015/05/05

神話上の生き物、半人半牛のミノタウロスが現代に生きている。「M」と呼ばれ、ステーキハウスでコック見習いとして働いている。

異形の生き物として人間の中で生きる「孤独」と「しんどさ」が溢れていた。

人間にも獣にもなりきれない。心も体も引き裂かれているようで、とてもしんどい。侮辱する人間のことなんか食い殺してしまえばいいのに、ミノタウロスはそうしない。

物事を投げ出さずに、やけにならずに、毎日をちゃんと生きる。

p212　「神話の登場人物であろうがなかろうが、他のみんなと同様、ミノタウロスの人生も不調和と不合理に満ちている」

続きが気になるラストだった。

2010/03/09

伝説の中で出てくる怪物である「ミノタウロス」が、現代で、ステーキショップで働きながら生活している物語。
ファンタジックなゲームをやったことがある人はきっと一度は耳にしたことがあるであろう、ミノタウロスは牡牛の上半身と人間の下半身を持つ生き物で、一般的な外見を持った人間からしてみると、そりゃーもう化物扱いをされる奇異な存在。永遠にも思える時を生きている過程で、その凶暴な野生はなりを潜め、人間となんとか共存しようとしているミノタウロスの身に訪れる数々の出来事は、悲しくもなったけれど、救いがあって良かった。

ミノタウロスは牛の分厚い舌を持っているので、きちんと「声」が出せなくて、いつも「ンフフフ」という声をだしている。物を伝えられなくて悲しんでいる。和気藹々と盛り上がる若者を見ては、仲間に入れてもらいたくて虚しい努力をするのですが、その感じがなんとも…。