商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 読売新聞社/ |
発売年月日 | 1999/10/07 |
JAN | 9784643990430 |
- 書籍
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アメリカ彦蔵
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アメリカ彦蔵
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商品レビュー
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ジョン万次郎に続き幕末の漂流民を描いた小説。 作者が違うので一概に比較はできないが、名の知れている同じ漂流民でも、彦蔵は万次郎に比べてかなり波乱の人生を送り、日本とアメリカの狭間でアイデンティティの確立に悩んだという印象。 14歳でアメリカの商船に助けられた彦蔵にも、万次郎と同じく温かな出会いがあった。それが税関長のサンダースであり、彼は最後まで彦蔵を自分を息子のように可愛がり、教育も受けさせていた。 サンダースのすすめでキリスト教の洗礼を受けて「ジョセフ・ヒコ」となった彦蔵は、アメリカへ帰化したのちに幕末の日本へ戻る。アメリカ人として領事館などの通訳をするが、攘夷派の武士に外国人が次々と襲われ、彦蔵も命の危険を感じ、いったんアメリカに戻る。しかし南北戦争でギスギスしたアメリカでスパイ容疑をかけられ、アメリカに嫌気がさし再び日本へ。それからの彦蔵は通訳や商人として、まるで根無し草の漂流民のように国内を転々とする。 しかし彼の交流関係は華麗だ。当時のアメリカ三人の大統領と謁見し、総領事だったハリスの元で働いた。日本人では伊藤博文、木戸孝允、井上馨、五代友厚と交流。しかも彦蔵は、日本で最初の新聞を発行した人物でもあり「新聞の父」と呼ばれている。彦蔵、大河ドラマになってもいいんじゃない? 最近は英語の達者な若い役者さんや外国人タレントも増えていることだし、ぜひぜひ。 ちなみにタイトルである「アメリカ彦蔵」だが、万次郎と違って武士ではなかった彦蔵は、名字の代わりに「アメリカ~」と呼ばれていたようだ。日本の女性と結婚して婿養子なり、初めて「浜田」という姓を授かっている。 また、この小説ではおそらくすべての漂流民が登場し、彼らの人生の概要が語られいる。もちろんジョン万次郎も登場。著者の粘り強い調査には脱帽だ。 同じ著者でジョン万次郎の物語も読んでみたいけど、書いてないみたい。残念。
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淡々とした文章を読み進むうち、最後に近づくにつれて本を持つ手が重くなる。ページをめくる分だけ重みが増えていくようで。 「漂流」って、そういうことなんじゃないのかな。 運命に翻弄されながら先行きはわからないまま流される。でもその間流れに晒されることで、澱のように積もり積もった...
淡々とした文章を読み進むうち、最後に近づくにつれて本を持つ手が重くなる。ページをめくる分だけ重みが増えていくようで。 「漂流」って、そういうことなんじゃないのかな。 運命に翻弄されながら先行きはわからないまま流される。でもその間流れに晒されることで、澱のように積もり積もったものもあるんじゃないだろうか。それは時に冷静な打算に因るものかもしれないし、動揺の余り留めて置いたものかもしれない。しかし理由がどうであれ、「漂流」の果ての有様を自身で受け止めなければならないのだ。故郷からも新天地からも見放される運命であっても。 自分が生きてきた重み。望むものであれ望まないものであれ、受け入れるしかなった人間の一生分の重みが、ここにはある。そして歴史を振り返れば、この主人公以外にもこういう重みを背負った人間がいるのだろう。それは今を生きる私が、未来に向かって受け止めなければならないものでもあるのだろう。
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