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燈台へ ヴァージニア・ウルフ・コレクション
2,860円
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | みすず書房 |
発売年月日 | 1999/04/09 |
JAN | 9784622045014 |
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時は20世紀初頭。スコットランド、ヘブリディース諸島にあるスカイ島で夏休みを過ごす哲学者の一家。そこに招待された客たちも加わり、小説世界のお膳立てはできた。とはいえ、何か物語めいたものの始まりを期待されるなら、貴方はこの小説の舞台である島には招待されることのない客である。なぜなら...
時は20世紀初頭。スコットランド、ヘブリディース諸島にあるスカイ島で夏休みを過ごす哲学者の一家。そこに招待された客たちも加わり、小説世界のお膳立てはできた。とはいえ、何か物語めいたものの始まりを期待されるなら、貴方はこの小説の舞台である島には招待されることのない客である。なぜなら、作者はあのヴァージニア・ウルフ。それまでの小説を「人生は左右対称につけた馬車のランプの行列」ではない、と切り捨て、「意識の始めから終わりまで我々を取り巻く光臨、半透明の外被」をこそ描かねばならない、と「意識の流れ」に基づいた近代小説の誕生を高らかに歌い上げた女性なのだから。 文学史では聞き及んでいたが、「意識の流れ」の手法で書かれた小説を、これまで「意識」して読んだ覚えがない。くるくると話者が入れ替わり、その度に視点が転換するめまぐるしい手法に、はじめての読者は少々戸惑いを覚えるかも知れない。しかし、一度その流れに乗れば、小説世界はまるで現実の世界のように自分の目の前に展開される。これまでの小説が、映画や舞台のように客席から眺めていただけで、自分は単なる傍観者であったに過ぎないのだと、あらためて思い知らされるほどに。 しかし、ウルフの作品は、単に実験的な作品というだけで人口に膾炙しているわけではない。その詩人的な感性、直観力に付け加え、父から学んだ広範な知識、教養に裏付けされた引用、それに何よりその構成の緻密さが独自の作品世界を構築している点にこそ愛される所以があるのだ。たとえば、ウォルター・ペイターがいみじくも言った「すべての芸術は音楽の状態に憧れている」ことを証明するかのように『燈台へ』は、ソナタ形式で書かれている。 全体は三部に分かれ、それぞれが、提示部、展開部、再現部を受け持っていることは、音楽に詳しくない者でも理解できるほど整然と構成されている。話者の視点の転換が、まるで楽曲の中で楽器奏者が次々と入れ替わり、主題を変奏する時のように、ある時は緩やかに、またある時は急テンポで奏でられてゆく。主題は題名にもある「燈台行」であるが、主題を巡って登場人物の心理、感情の揺れ動きを音楽を聴くように味わうのが、この小説の最も賢い鑑賞の仕方であろう。 『燈台へ』は、作家の両親をモデルとしたラムゼイ夫妻一家を描いた小説である。哲学者としての有為の将来を八人家族を養うために脇に置き、「無駄口」と自嘲する講演で辛うじて自尊心を満足させているラムゼイ氏は、子どもたちにとっては反論を許さない暴君でもある。氏は、家庭人としての幸せを感じながらも、学者として「敗北者」であると感じる時がある。そんな時妻に同情を求めずにはいられない。一方、美貌とその性格を皆に愛される妻は、同情を請う夫には困惑を隠せないが、その精神性の気高さを愛し続けている。人間がうまく書けないと言われるウルフだが、この二人の人物像は魅力に溢れている。 提示部のクライマックスは、それぞれがばらばらであった会食者が、夫人を中心にまとまり和解する晩餐会の場面で終わる。展開部は、それから十年後、久しぶりに島にやってくる家族のために使用人が掃除をしている場面から始まる。荒れ寂れた別荘の様子が、風を擬人化した詩的な文章で描かれる。夫人と二人の子は既に亡くなっている。語り手でもある夫人の友人の女流画家が再登場すると、再現部の始まりである。再現部は、提示部で示されながら、果たされることのなかった第一主題「燈台行」が再現される。幼かった末っ子も成長し、相変わらず命令的な父に反抗しながらも船の舵を取る。やがて、船は無事に燈台に着き、互いの近しさを認めた子は父と和解する。画家が第一部以来書きあぐねていた絵を完成したところで小説の幕は閉じられる。作者自身が投影された画家が作品を描きあげる過程についての言及は、作家が作品を書き上げる過程を告白しているようで、その正直さに驚くとともに深い感動を覚えずにはいられない。 ウルフの実験的な小説世界に興味が湧いたなら、今、話題の『ダロウェイ夫人』、本作『燈台へ』、そして『波』と、書かれた順に読み進まれることをおすすめする。作家の実験がどのように進められていったかがよく分かるだけではない。小説世界に入り込むにはその方が自然だからである。
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ウルフは天才だなぁ、と読むたびに思う。最初の方を読んでいるときは少し緩慢だと思ったけれど、後の方に向かうにつれて一気に読んでしまった。いつか原文で読めるような英語力がつけばいいのだけれど。
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