ルーガ

小池昌代(著者)

• 販売会社／発売会社: 講談社/
• 発売年月日: 2005/11/10
• JAN: 9784062131155

商品レビュー

2010/04/02

幸福というものは、ああ、幸福だと思ったとたん、なにかほかのものに変容する…。女の心の奥の奥にある、言葉になりにくい美しいものを綴った小説集。書下ろしの表題作ほか、『群像』に掲載した２編を収録。
詩人小池昌代が初めて書いた小説（集）。ちょっと変な作家だとは思っていたけれど、やっぱりデビュー時から少し変わっていたことがよくわかった。言語を始めいろんな感覚が独特というか…。
（Ｃ）

2009/07/16

詩人である著者が、「最初から小説だ、と思って書いたものは、今度がはじめて」という短編集。『ルーガ』、『ニギヤカな岸辺』、『旗』の3編を収録。

ということは、これまでは「エッセイが小説のようになることもあった」と書いているように、『感光生活』は、著者の中ではエッセイだったことになる。

さて、表題作『ルーガ』では、腕前に自信があるわけではないが、ミシンに触れているだけで幸福を感じる蜜子が、働いているスーパーマーケットの同僚からの頼まれごとをきっかけにミシン熱が再発、かつて買った2台のミシンがあるにもかかわらず、新しく「2000系ルーガ」という名のミシンを買い求め、それ以来ミシンワークにおぼれてゆき、破滅への道をたどる。

日本語が美しく、整っている上に、とにかく心理描写が巧み。蜜子にとってはその選択肢しかないという必然性が、その心理描写によって納得させられてしまう。それも、自分にもよくあることだと感じさせられながら。

そしてこの本のどの短編もまた、「世にも奇妙な物語」にぴったりな内容である。いつこのドラマになってもおかしくない。そう思うのはなぜなのか考えてみれば、どの短編でも必ず、狂気と死が、日常の中に隠れているからかもしれない。

わたしがこの中で好きなのは、やっぱり『ルーガ』かな。(2006.1.12)

2009/02/07

あぁ、ものすごい想像性。ミシンひとつでお話しが進んでいくなんて。長い詩を読んでいたような感じだった。それにしても、怖かった。心の奥底の何者かが、動揺してしまうような感覚だった。