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ソラリス
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ソラリス
¥2,640
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商品レビュー
4.2
41件のお客様レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
SFを読むならと勧められた本のうちの一冊。原作は1961年に発表されており、ちょうど60年前の小説ということになる。 今でこそ有り様が違うために理解することすらできない未知数の存在というのはフィクションでもまま見るけれども、これはその元祖といえる本なんだろうか。読み進めてずっと宇宙ステーションの中だけで物語が進んでいくので、一大スペクタクルを期待していた私は正直肩透かしを食らった気分だった。舞台はそれが過ぎ去った時代からスタートしている。 読んでいてなにより辛かったのは授業のような「ソラリス解説」だった。物語のソラリスについて、その研究歴史についてじっくりと説明される。これがなきゃ文量は半分で済んだんじゃないかというくらい書かれている。訳者解説が無かったら私はこの話の魅力の半分も理解できたか分からない。「ソラリスがどれだけ理解しようとしても未だ理解できない存在か」ということを理解するために、様々な面からアプローチがあったという事実を知ることは大切なのは分かるが、読み進めるのが大変だった。 「ソラリス」は言われるように、ミステリー、サスペンスホラー、ラブストーリーと多面的な要素を構造に組み込まれた魅力的な物語だと思う。だから読者によってそれぞれ違った受け取り方が可能だ。それこそ映画監督がソラリスから郷愁を見出して映画を作り上げたように。 けれどもこの本では、多面を要していてもそれぞれが十分にものを含んでいるとは言い難い、少なくとも私にとっては上記に挙げる要素のどれも物足りなかった。香り付けのように感じる。どちらかというとエンタメではなく、哲学的な要素が強い印象だ。 (思い出の中の彼女をトレスした「お客さん」が主人公ケルヴィンに彼にとっての彼女そのものの言動や行動を取ったことで、そして自己犠牲という判断をしたことで、彼女を愛する、または一人の人間の自我を見出したとして、愛しているのは結局自分もしくは自分の脳ではないのだろうか。本物の彼女はすでに死んでいる上に、愛着を持った始まりはそもそも外見、つまり思い出の人を模されたことによるものだ。抱く共感も、内心の想像も全て霞のようなものを相手しているに過ぎない。他者の存在しないそれが恋や愛だとは私は思えず、相手に対して不気味さが残るホラー色が強い。 私がケルヴィンだったら思い出の彼女を侮辱されたかのように感じて怒っていたかもしれない。けど愛着を持つ主人公の気持ちもよく分かる。 人の深層心理から汲み取ってみせるソラリスは、人によって恐怖の対象だろう。だからこそ他の研究者達が他人から酷く隠したりしていたのだと思う。他者の目に容易に映るようになってしまった思い入れのある存在が無遠慮に周りに認識されてしまうことは、人にとって恐ろしいことだ。 ソラリスの作り出した、その人にとって意識に強く残っている存在が、他人の目に映る時も人によって姿を変えずそのままというのも、不思議ではあるけれど) より温かみを感じたのは、翻訳された間接的な文章からも伺えるスタニスワフ・レムの冷徹さがありながら、理解不能のソラリスという存在に対して対峙を試みるラストへ物語が決着したということだった。 未知の存在に対して理解しようとする道を閉ざさないこと、排他的になってはならないこと、また「違う存在に対して自分や人の性質を投影し、共通を見出すことによって理解しようとすること」は本質から遠ざかりかねないことを徹底して描いている。骨太で、作者の信条を感じながらそれでいて読者に問いかけを投げてくれる、良い本だった。
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発見から数十年経過しても謎に包まれ、基地に送り込まれた人々は不思議な体験を続けている。 未知ゆえ、ソラリス学なるものも生まれるも解明には程遠い。 緻密に編み込まれたソラリス学に圧倒される。
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1961年ワルシャワにて初版。 以来30以上の言語に翻訳され「20世紀文学の古典」とされる作品。 構えて読み始めたが、沼野氏の訳は親しみやすく、前半は物語に引き込まれて一気に読んだ。 後半以降、度々展開される「ソラリス」研究のくだりは、あまりに学術的で、あまりに描写が鮮明で、も...
1961年ワルシャワにて初版。 以来30以上の言語に翻訳され「20世紀文学の古典」とされる作品。 構えて読み始めたが、沼野氏の訳は親しみやすく、前半は物語に引き込まれて一気に読んだ。 後半以降、度々展開される「ソラリス」研究のくだりは、あまりに学術的で、あまりに描写が鮮明で、もう何の話かついていけないけど、レムの頭の中すげえと恐れおののきつつ若干ページを飛ばす。(スミマセン) 「人間は他の世界、他の文明と出会うために出かけて行ったくせに、自分自身のことも完全には知らない」p265 ソラリスの意図が理解できないまま、長い歴史を人類は翻弄されてきた。 不可解な現象を前に右往左往する様は滑稽ですらある。 これまで描かれてきた物語では、地球外生物と出会った人類は、平和的関係を築くか、はたまた生死をかけて戦うか、どちらにせよ「地球上に認められる諸条件をただそのまま無限の宇宙に持っていっただけ」p363 であった。 一方、レムが『ソラリス』で示したのは、「コンタクト」そのものであり「理解不能な未知の現象に出会った場合の製作見本(モデル)」p364 であった。 ラストで、「海と会うため」p341 一人ステーションの外に出ていく主人公。 そこで「用心深い、しかし臆病とは言えない無邪気さ」を見せる海に触れ、「まるで一切努力もせずに、言葉もなく、何も考えることなく、この巨人に対してすべてを許せるような境地」p343 に至る。 異質な他者と対峙した時、それに対する「違和感を保持しながら、それでもなお他者と向き合おうとする」p359 姿勢をとり続けること。 親切な訳者解説で、この大作をどうにか理解できました。地球上においても、”未知との遭遇”を経験した際に覚えておきたい。
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