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町角ものがたり
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町角ものがたり

池内紀(著者)

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町角ものがたり

1,980

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 白水社/
発売年月日 2004/09/15
JAN 9784560049969

町角ものがたり

¥1,980

商品レビュー

4

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2013/03/10
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題名どおり、ヴェローナからはじまり、ミュンヘンに終わるヨーロッパの町角を舞台に、薬局や時計屋といったどこにでもある店や、教会その他を素材に、淡彩画の趣きで、ささっとスケッチしたような短い文章が27編。各編のタイトルは「ローマのゲーテ館」や「ブダペストの鍛冶屋」のように、都市の名前と町角にある建物や店、広場の名前をあわせてつけられている。かつて訪れたことのある思い出の街を探して、そこから読み始めるもよし、一度は訪ねてみたい念願の土地から読むもよし。どこを選んでも、何か旅のヒントが得られるように書かれている。 押しつけがましさのない、さりげない書きぶりは、旅行ガイドにはない個人的な旅の記憶が影を落としている。どんな風にしてここに書かれたような旅をしたかが、あとがきに書かれている。「はじまりはカレンダーにしるしをつけること。年頭にあたり、十二か月分をめくっていく。三月・五月・六月・九月・十月・十二月。それぞれの月の二週間を赤いワクで囲む。旅程を先取りするわけで、早春、初夏、秋、年の瀬といろどりがいい。」 文筆業は零細企業。日程は注文とのかねあいである。先取りしても注文が入れば×をつける。×がふえると残りの赤ワクを青で囲む。絶対ゆずらないというしるし。かたく心に決めれば、段取りはわりと自由がきくのが個人営業のいいところ。あとは、格安チケットを探して小型トランク一つを提げて旅の空という。たいてい同じ町に三日なり一週間いて、あまり動かない。外国語が話せるから、町の中に入り込める。何気ない町角の風景が多いのは、名所旧跡よりも人々の暮らしの方に目が向くからか。 しかし、旅の空のこと。ヨーロッパの町や人々について書かれても、そこに長く暮らした須賀敦子の書く物のように深くは入り込まない。あくまでも旅人の視線はくずさない。その軽さがエッセイの風通しをよくしている。そうはいっても、ドイツ文学が専門のセンセイである。言葉のはしばしに蘊蓄がにじみ出る。パリのセーヌ左岸では、自分の訳したヨーゼフ・ロートの『聖なる酔っぱらいの伝説』で主人公が寝ぐらにしている橋はどれかと考え込んだりもする。映画も見たが、あれはどの橋だったのだろう。 「ドレスデンの聖母教会」では、鴎外の『独逸日記』や『文づかひ』から流麗な雅文体を引用したりもする。若い留学生の目が見た一世紀あまり前のドレスデンは『人目を眩まし、五彩爛熟たる』大都市だった。第二次世界大戦末期に起きた有名なドレスデン大空襲はその盛都を瓦礫の山にする。その瓦礫の一つ一つに番号をつけ、もとあった位置に収めていくという気の遠くなるような作業が、今ドレスデンで進められている。 ヨーロッパの町は、それぞれに固有の歴史を持っている。街角に立つ小さな店ひとつとっても、歴史の波に洗われてきている。そんな町角に暮らす人々のものがたりを、何気ない会話を糸口にして上手に聞き出し、ぽんとてのひらから取り出してみせる。とりたての野菜をそのままちぎって皿にのせたサラダのように、無雑作でいながら、食欲をそそられる語り口はあとを引く。カバーの絵や題字、各編の冒頭に添えられたイラストも筆者の手になる。洒脱なスタイルがエッセイによく似合っている。旅好きの人におすすめしたい。

Posted by ブクログ

2011/06/20

 かつての東大文学部教授で、カフカの翻訳で知られる著者。1970年代から硬軟取り混ぜたテーマでエッセーや評論を膨大に発表してきた人です。タイトル通り、ヨーロッパの27もの都市を巡った旅のエッセー。旅先では1都市に4、5日滞在し、町をすみずみまで歩くという若者。しかし、いつのまにか...

 かつての東大文学部教授で、カフカの翻訳で知られる著者。1970年代から硬軟取り混ぜたテーマでエッセーや評論を膨大に発表してきた人です。タイトル通り、ヨーロッパの27もの都市を巡った旅のエッセー。旅先では1都市に4、5日滞在し、町をすみずみまで歩くという若者。しかし、いつのまにかひいきの場所が1、2カ所できて、結局はそこを何度も訪れるようになるのだとか。  ヴェローナの円形劇場を訪れてもゲーテを想い、ザルツブルクの時計屋では英国圏とドイツの時間の違いを面白がる。博識であることが、どれだけ旅を豊かなものにしてくれるか、教えてくれる1冊です。ガイドブックで目的地に着いたと満足している旅とはいかに違うものか、溜息がでるほど。こういった「知的なガイドブック」がもっとあれば、旅行へ出かけたくなる人も増えるのでは。  この本以外にも「ひとり旅は楽し」「異国を楽しむ」「ドイツ 町から町へ」「西洋温泉事情」と、旅行関係の著作多数。ドイツ文学に造詣が深い人だけに、同じ紀行文でも都市論や文学史がふんだんに盛り込まれていて、海外を楽しむにはせめてその国の歴史と文学は知っておきたいものだ、と、つくづく思わせます。

Posted by ブクログ

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