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日本人の住まい方を愛しなさい
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 王国社/ |
発売年月日 | 2002/09/20 |
JAN | 9784860730055 |
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日本人の住まい方を愛しなさい
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日本人の住まい方を愛しなさい
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私事に渉って恐縮だが、我が家は所謂プレハブ工法で建てられ、築20年を越える。この夏、屋根を覆う工法で葺き直したばかりだが、担当者に拠れば、本瓦以外の屋根材は劣化が速く、これでもう大丈夫とは保証しかねるとのことだった。それなら何故本瓦で葺かないのかといえば、高価なことはもちろんだが...
私事に渉って恐縮だが、我が家は所謂プレハブ工法で建てられ、築20年を越える。この夏、屋根を覆う工法で葺き直したばかりだが、担当者に拠れば、本瓦以外の屋根材は劣化が速く、これでもう大丈夫とは保証しかねるとのことだった。それなら何故本瓦で葺かないのかといえば、高価なことはもちろんだが、屋根勾配の取り方が本瓦とプレハブ建築の多くが採用しているコロニアルベストでは異なっているからだ。つまり、プレハブ建築の屋根は20年しか保たないのだ。 借金をして家を建て、やっとローンが終わったと思ったら、外壁の再塗装、雨樋交換、浴室の改装と何年かごとに百万円単位で出費がかさむことになるのがプレハブの現実である。若気の至りでプレハブ会社を信用したこちらが莫迦だったと言えばそれまでだが、家というものは、いつからそんなにも脆く毀れやすいものになったのだろうか。親の代に在来工法で建てた家は、古びながらも何度もの台風を乗り越えてまだ矍鑠としているというのに。 「日本は近代に入ると、居住様式にしろ台所の型にしろ、『近代化』を目指すことになり、江戸時代後期に完成されていた旧日本型を見捨てることにした。そこで、新日本型を創出しよう、とするんじゃなくて、西洋型を取り込もうという路線をとった。これが誤りだった」と著者は言う。しかし、これは、何も居住様式に限らない。日本が取り入れた西洋式というものの正体は凡そ本当の西洋とは似て非なるものだった。 南欧風や西班牙風のプレハブ建築は外から見れば確かにそれらしく見えるが、壁は木の軸組や軽量鉄骨を間に挟んだ太鼓張りのスカスカで、銘木の表皮を極端に薄く剥いだものを合板に貼りつけただけの板壁は、本物の持つ質感に遠く及ばない。法や政治のあり方から経済活動に至るまでこの似非西洋式がはびこり、本来創られねばならなかった新しい日本の生活様式が等閑に付されてきたことが現在の日本の低迷ぶりを生んだというのは筆者の実感であるが、話を元に戻そう。 著者は台所を基点に定め、日本型の住まいのあり方を探っていく。ネパールやインドに日本型台所の原型を見る著者の提言は、自然と前近代型のものになる。水道の蛇口を流しもとから遠ざけ、いちいち汲み置いた水を使うことで節水を図るという考え方にも見られる、環境やエコロジーを主唱する人たちに特徴的な「反近代」性が現実に説得力を持つかどうかは意見の分かれるところだろう。 それは別として、「仕舞うと見えなくなる=無くなるのをさけるために出しっぱなし。これが日本人の収納特性」だという話は、我が家にもぴったり当てはまる。更には、文末に至るまで態度を明らかにしない日本語構文と料理店の作りを比べて「まず入口があいまいで半身を入れても、出てこられる。内に入っても居すわるかどうかは保留していられる。料理を一品とって酒を一本、それで出てこられる」ところなど「日本の空間の構成は日本語の構文とそっくり同じ」であると指摘するくだりには思わず膝を打った。 そういう時と場と場合の選択の余地が我々日本人にとって精神的なやすらぎをもたらしてきたのだが、いまどきの和風洋式にはそれが無い。日頃使っている日本語構文と住空間の食い違いが現代人のストレスの一因だろうという指摘はすとんと腑に落ちる。建築談義の形をとった日本人論として読んでも、随所に卓見の光る好著である。
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