商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 中央公論新社/ |
発売年月日 | 2002/08/24 |
JAN | 9784120033063 |
- 書籍
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『空海の風景』を旅する
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『空海の風景』を旅する
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商品レビュー
3.5
2件のお客様レビュー
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『空海』のブームが続いているらしい。 無論、司馬遼太郎の空海の風景を読む選択もあったが それよりは、感情が前面に出ていない こうした取材日記のようなものが、いいのでは?と。 そう思ってこの本を読むことにした。 有名な司馬遼太郎の著書『空海の風景』。 映像化をいろいろなところから依頼されるも、 ドキュメンタリーのように制作して欲しいと ドキュメンタリーでなければ許可しないと、 ずっと主張されていたようだ。 この本は、司馬遼太郎に、ドキュメント仕立てで作る番組なら と、許されたNHK取材班の長期にわたる番組制作の 裏側を、パートごとに責任プロデューサーが文章を書く。 そして、この取材が行われた時代は9・11 あの惨劇が世界を席巻していた頃だ。 一読してみた。 空海は、香川県善通寺市の生まれ。 国家の地方役人の子。 と言っても、中央から地方にやってきた役人では無く もともとは国家に反抗していた民を服従と引き換えに その地方を納める役人となった一族だ。 その心の奥には、いつも大和と言う国家に対する 冷えた怒りがあったのかもしれない。 大和人ではなく、外毛と呼ばれる今でいう蝦夷の民族ではないか。 佐伯という名はサエギからくる。 言語も大和言葉ではなく独特の言語を使っていた。 空海の天才ぶりは、数多く残るが、この多数言語を使うという それ自体が今でいうところの脳の活性化に影響を与えたに違いない。 空海は抜きん出た頭の良さばかりでなく 自然を愛した。野山はいつも彼の友人であり 時間さえあれば野山を飛ぶようにして遊んだであろう。 そして、強健な体ができた。 同じ時に遣唐使としてわたる最澄。 彼は漢民族出身で、初めから位が高い家に育ち 恵まれた出世街道をのぼる。 空海の7〜8歳年上らしい。 最澄は国の予算で唐に派遣され、生活費も、何もかも 潤沢な予算を使うことができた。 が、空海は? 彼は十分な資金は得られず、ただただ彼の才能で 人と人を結び今の重要文化財の数々を日本に持ち帰る。 十分な操舵術を持たない日本の船は難破し 中国南部の地方へ。 すでに日本にいた時点で、言葉を理解し表現できた空海は 皆が疲労困憊し、途方にくれる非常事態に 舌をまくほどの名文章で、 住民に怪しがられていた立場から 国家をあげて受け入れるべき人物たちという扱いに 変貌させるような文章だった。 また、20数年も修行をしていた中国人の僧侶を差し置き インド直系の中国密教体系を受け継ぐ恵果は、 出会ったばかりの空海に全てを伝授する。 密教は全ての修行者に受け継ぐやり方ではなく 師が、認めたただ一人に受け継がれるのだった。 出会ったばかりの恵果は泣き喜んだという。 その頃の兄弟子呉慇はまるで「瓶に水を注ぐようだ」といった。 しかし、この伝授がなかったら中国で消滅してしまった密教は 無くなってしまったかもしれない。 中国では国家が変わる度に、いろいろなものが消滅した。 密教を初め、仏教も大きな破壊にさらされたのであった。 中国ではむしろ日本に残り発展を続けた仏教を 学びにくるのだという。 空海の天才ぶりは、知識、知能ばかりでなく 有効に発揮するタイミングをも測る プロデューサー手腕も光る。 でなかったら、地方のしかも少数派、被征服者である 彼がこのように日本各地に現れたというような 多数の逸話が残るわけがない。 大きな仕事を、良いタイミングで、行えたのだった。 唯一、残念と言えるのは あまりに大きな巨人である空海が完璧に近く 作り上げたため、他の宗派のように 後世に、成熟してゆく余地を残さなかった部分だ。 未熟であったため、次第に研究され成熟されてゆく宗派が あったのに対して、それを許す余地があまりに少なかった。
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舞台の風景がわかる。 時期同じく天台宗座主が、高野山を参拝。宗教的感慨に対しては遠いが、歴史を感じる。 空海、天才は限りなくゼロに近い。
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