商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 白水社/ |
発売年月日 | 2001/03/25 |
JAN | 9784560028292 |
- 書籍
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文学は別解で行こう
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文学は別解で行こう
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経済、信用取引、サン=シモン主義、野球? ・・・意外な方向から、 文学や評論、生き方を読み解く。 それがまぁ、しっくりいくところが面白いのです♪
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前書きがいい。鹿島氏が高校生時代、数学の教師が難問をさらりと解いた後、「別解で行こう」と言いながら、様々な解法で解き終わり、「多く解けばいいものじゃなくて、別解に挑戦した方が上達は早いんだよ。」と結語したという話である。爾来鹿島氏の頭から「どんなものにも別解というものはある」とい...
前書きがいい。鹿島氏が高校生時代、数学の教師が難問をさらりと解いた後、「別解で行こう」と言いながら、様々な解法で解き終わり、「多く解けばいいものじゃなくて、別解に挑戦した方が上達は早いんだよ。」と結語したという話である。爾来鹿島氏の頭から「どんなものにも別解というものはある」ということが離れなくなったという。 最近、フランス文学は流行らないのだそうだ。文学ばかりではない。レンタルビデオ店でフランス映画を借りると店員から「それフランス語でしょう。おもしろいんですか」と逆に訊ねられる始末である。フランスの強いのはサッカーばかりになってしまったのだろうか。 一昔前、文学と言えばフランス文学という時代があった。ラディゲ、ジッド、コクトーといった名前が文学者ばかりでなく、普通の学生の口から出たものであった。さすがに鹿島氏、そんな文学者ばかりでなく、ジュール・ヴェルヌやルブランを俎上にのせ、別解でもって料理して行くところなど、かゆいところに手がとどく塩梅である。一例を紹介しよう。 『八十日間世界一周』は普通、旅行小説だと思われている。しかし、氏はこれに疑義を唱える。「貨物船が地球を一周したとしても、それを旅行したとは言わない。」旅行というのは、「血肉を具えた人間が自らの意志に基づいて旅をした場合」をいうのだと。それなら、主人公フィリアス・フォッグは何なのかというと、それは『信用』だというのだ。主人公にはベアリング兄弟銀行に二万ポンドの預金がある。彼はそれを賭けて旅に出る。途中の街に到着するのが遅れたり、早くなったりする度に株式市場での賭券の値が上下する。旅行しているのは他でもないペーパーマネーとしての信用である、というのが氏の見つけてきた別解である。なかなかスリリングな解釈ではないか。 話はこれだけで終わらない。フィリアス・フォッグという名前は「イギリス(フォッグはイギリスを象徴する霧)を愛せ(フィルはラテン語で愛する)」という意味にもとれ、従僕のパスパルトゥー(合い鍵、万能薬の意)と共に行動する時、「フランスがイギリスという友人を信じてこれと結びつけば、こわいものなし」というメッセージを帯びるという驚くべき解釈が生じる。時は普仏戦争敗北の二年後、親英感情はかつてない高まりを見せていたはず。充分考えられる暗号である。 デカダンスの聖書、ユイスマンスの『さかしま』についての考察や、ボヘミアンの伝説『ラ・ボエーム』についての蘊蓄も楽しく読ませてもらったが、ジャン・コクトーがシュルレアリストたちのいじめにあった話は初耳であった。フランス文学に心躍らせたことがある人には是非お薦めしたい一冊。
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