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シンポジウム
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シンポジウム

ミュリエル・スパーク(著者), 正岡雅子(訳者)

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 筑摩書房/
発売年月日 1998/11/10
JAN 9784480831774

シンポジウム

¥2,420

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2013/03/09

舞台はロンドン北部イズリントン。『アバウト・ア・ボーイ』でヒュー・グラントが住んでいるあの町だ。ヤッピーや若手アーティストの集まっている町。その家はキャンバーウェル・ニュー・ロードから入った静かな通りに面している。ヴィクトリア朝様式の三階建てで、アメリカ人の画家ハーリーと同棲相手...

舞台はロンドン北部イズリントン。『アバウト・ア・ボーイ』でヒュー・グラントが住んでいるあの町だ。ヤッピーや若手アーティストの集まっている町。その家はキャンバーウェル・ニュー・ロードから入った静かな通りに面している。ヴィクトリア朝様式の三階建てで、アメリカ人の画家ハーリーと同棲相手のオーストラリア出身の裕福な未亡人クリスが住んでいる。折しも、そこではパーティーが始まっている。パーティー好きのホストが一週間も前から考えた選りぬきの料理が専属の料理人と執事によって手抜かりなく供されている。 よく太った雉と小さなソーセージのベーコン巻、それに小人参を載せた大皿を手伝いの給仕が、客の間を回って給仕していく。ボルドーの赤を持った執事がそれに続く。この日の客は十人。年齢こそ様々だが、男五人はよく似た人種で、それぞれが女性を同伴している。話題の中心になっているのは、ウィリアムの新妻マーガレット。燃えるような赤毛のロマン派風美人である。出席者の何人かは結婚前の姓であるマーチーという名に聞き覚えがあるらしいが、この時点でははっきりしない。 アッパー・ミドルらしく、互いの話に聞き耳は立てながらも会話はそつなく流れてゆく。どうやらスージー卿の家に強盗が入ったらしい。上で寝ていた夫妻に危害はなかったが、一階はめちゃくちゃに荒らされていた。銀器や鏡まで盗まれたのにフランシス・ベーコンの絵はそのままだったというから、強盗はベーコンを知らなかったのだろう。さりげなく語られる会話の端々から客のスノッブさが透けて見える仕組み。 章が変わるたび、客のこの日までの会話や行動がスケッチされ、ちょうど蜘蛛が巣を張る時のように少しずつ核心に向かって進んでゆく。放射状に張られた糸が集まるのはマーガレット。どうやら謎めいた美女はとんでもない食わせ物らしい。そのマーガレットは二年前、スコットランドはセント・アンドリューズの海岸近くに立つ小塔のついた父の家で、精神病院から日曜ごとに外出を許され弟の家にやってくるマグナス伯父に会っていた。精神を病んでいながらもこのマグナスがマーガレット一家の導師(グル)だというから、この家族の肖像には奇妙な歪みが見える。 都心の優雅なスノッブたちの集まりの中に、スコットランドから謎めいた風が吹き込んでくる。ラファエロ前派風の装いをした赤毛の美女の正体や如何に。洒落た会話の裏に隠された一見相手を思いやるように見えて、実は自分が他人からどう思われるかを気にする俗物心理が真実を暴くことを躊躇させ、サスペンスを高める。奇妙な味わいを持つ人物造型、張り巡らされた伏線、皮肉な結末と、上質の舞台かイギリス映画を思わせる巧みな展開に最後まで一気に読まされてしまう。現代イギリスを代表する作家の最近作。

Posted by ブクログ

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