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ケインズに先駆けた日本人 山田方谷外伝
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 明徳出版社 |
発売年月日 | 1998/04/30 |
JAN | 9784896191417 |
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ケインズに先駆けた日本人
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ケインズに先駆けた日本人
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商品レビュー
4.7
3件のお客様レビュー
2016.12.11 再読 炎の陽明学 より だいぶ落ちる。 とはいえ、前著がすごすぎただけ。
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マルクスに先駆けた日本人として安藤昌益を紹介した文章を読んだことがあるが、ケインズに先駆けた日本人もいたとは、という思いでこの本を手にとった。 大阪の蔵元に藩の粉飾決算を告白して借金を一時棚上げさせ、領内で直営公共事業を積極的に起こすことで、雇用を生み出し、賃金を得られた領民に...
マルクスに先駆けた日本人として安藤昌益を紹介した文章を読んだことがあるが、ケインズに先駆けた日本人もいたとは、という思いでこの本を手にとった。 大阪の蔵元に藩の粉飾決算を告白して借金を一時棚上げさせ、領内で直営公共事業を積極的に起こすことで、雇用を生み出し、賃金を得られた領民によって有効需要が拡大し、領内経済の発展につながる。そして上向いた経済により藩にもたらされた利益で、先に棚上げしていた借金を完済、etc. 今から見ると「教科書どおりじゃないの」って簡単に言えるかもしれないけど、先例もない、理論書もない、有識者のアドバイスもない、という「ないないづくし」のなかで、自己の才覚のみで難題を切り抜けた事実だけでもすごいのに、自分や一族の名を挙げることが一番の目標、と誰もが考えていた歴史的制約のなかで、領民の最大幸福の実現を目指していた事実に驚くとともに、現在の混迷した世の中に、方谷に匹敵する志をもつ人物が現れないことが残念でならない。 それにしても、これほどの人間の名前と業績が、一部の歴史マニアにしか知られていないって、どういう事だろう。 日本の歴史って、殿様とか武将とか、中央政府の人間しか史料として残ってないんだな、という思いを裏づけされた感じ。 たとえ岡山県という(明治維新ではあまり貢献しなかったかもしれない)一地方の小藩での話であっても、この本で描かれた方谷ほどの業績ならば、今の世の人口に膾炙していてもおかしくないはず。 在野で活躍した人は、自分で書いたものを残すか、宮本武蔵みたいに後世の小説家が想像力を膨らませて創作するかでしか歴史に登場できないというのは、日本社会の底の浅さというか、明治維新の勝者によって以後の歴史が塗り固められているという「歴史をはかる物差しが一本しかない貧弱さ」に地団駄踏む思いがする。 司馬遼太郎は方谷を主人公に小説を、という声に「方谷は偉すぎる」と答えたという。 しかしこの本では、大胆な財政改革の一方で、多くの弟子に慕われ、豪快に酒を飲んで漢詩を読み飛ばす人間臭さも描かれる。 こんな時代にこそ、歴史小説家やテレビ・映画関係者、あるいは新しい改革の道を歩む政治家を名乗る者は、方谷の事績に対し目を開き耳を傾け、その人生を追ってみるべきなんじゃないか。 最後に、JR伯備線に「方谷」(ほうこく)という名前の駅があるのも、彼が地元に愛された事実が偲ばれるようで興味深い。 (2011/9/20)
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矢吹邦彦さんの前著「炎の陽明学」の続編として書かれた本です。前半では山田方谷の経済政策をケインズ理論の視点からの考察、後半は三島中洲や矢吹久次郎といった彼の弟子たちのことが書いてあります。 ケインズはイギリスの経済学者で、1929年の世界恐慌以降の資本主義に「新しい経済学」を...
矢吹邦彦さんの前著「炎の陽明学」の続編として書かれた本です。前半では山田方谷の経済政策をケインズ理論の視点からの考察、後半は三島中洲や矢吹久次郎といった彼の弟子たちのことが書いてあります。 ケインズはイギリスの経済学者で、1929年の世界恐慌以降の資本主義に「新しい経済学」をもたらした人です。不況時には質素倹約を基にした守りに入る従来の経済理論に異議を唱えました。「消費は美徳であり、節約は悪徳である」という考えを持ち、公共投資の投入と公定歩合の引き下げ、減税によって中産階級以下の人たちに活力を与え、市中の金回りを良くすることで景気をよくしていこうという考え方をしました。その考え方をその約100年前に実践して見せたのが山田方谷でした。 しかし、このケインズ理論も万能ではなく資本主義の劇薬であると著者は述べています。戦後から1960年代までの高度成長期には一世を風靡したこの理論も、オイルショックでほころびはじめ、バブル期に使い方を間違えてしまったために日本の資本主義が狂ってしまいました。これは、山田方谷が使い方を間違えると劇薬になるといった陽明学と同じともいえます。 現在の不況をまるで予見しているような内容ですが、その脱出のヒントも書かれているような気もします。金まみれになって混沌の渦中にあり、心のよりどころと倫理を希薄にした現代社会に対するアンチテーゼのようです。「世の中全体が狂っているときには、正気であることのほうが馬鹿げている」(サムエルソン)現在ですが、正気であることが今を生き抜くテーマであると思います。山田方谷の弟子の三島中洲は「利を見て義を思う」「義は利の始め、利は義の終わり」という義利合一論を唱えました。「虚」の世界にある現状を打破するためには、心の時代に回帰して「義」の部分を見つめる必要があると感じました。 山田方谷が河井継之助に語った言葉が最後に出ていました。「友に求めて足らざれば天下に求む。天下に求めて足らざれば古人に求めよ」。古人の叡智は凄いと改めて感じました。
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