殺人トリック劇場 難題ミステリー11連発 ワニ文庫

新保博久(著者)

• 販売会社／発売会社: ベストセラーズ/
• 発売年月日: 1996/08/05
• JAN: 9784584304969

商品レビュー

2024/07/09

　その昔、一九九〇年十月に放送開始された「マジカル頭脳パワー！！」というクイズ番組がありまして、毎回最終問題は「マジカルミステリー劇場」という推理クイズコーナーだった。一九九二年の四月に、このコーナーは終了したそうです（番組自体は一九九九年九月まで続いた）。
　私は子どものころこの番組を毎週家族で楽しく見ていて、なんかボードゲームみたいなおもちゃまで買ってもらった記憶があります。「マジカルバナナ♪」なんて遊び、今小学生のうちの子もたまにやってるし、なんでマジカルでなんでバナナなのかわからないけど、すごいですよね。
　その「マジカルミステリー劇場」で出題された問題のとあるトリックで、ひとつ妙に印象に残っているものがあり、実はこの三十年間砂糖を使うたびにそのトリックのことを思い出しながら生きているのですが、先日暇つぶしに「マジカル頭脳パワー　砂糖」なんて検索していたら、マジカルミステリー劇場がちゃんと（？）書籍化されていたということを知り、もう古書としてしか取り扱いがないみたいなんですが、読んでみたくて買っちゃいました。
　全放送分のお話が収められているわけではないので、件の砂糖の話は本書にはなく、続編といえる別の同種の本にも収録されているかどうか、確認もしていないのですが、まあそれはそれで構わないや、と。砂糖のトリック以外はほとんど忘れていたみたいで「この話覚えてる！」という感動はなかったのですが、一話一話に対して、新保博久さん（番組の原案スタッフのおひとりだったとのこと）が制作秘話を書いておられるのが面白かった。
　“何がきっかけでこのトリックを思いついたか”というミステリー作話の裏話もミステリー好きとしては興味深いのだが、テレビ番組制作ならではのエピソードーーたとえば、“ゲストの岡本夏生さんに水着で登場してもらいたいというところから始まった企画であった”とか、“このときパネラーのひとりであったラサール石井さんの回答がとても高度で、正解よりもむしろ優れていたかもしれないと思う”などーーの方が、読んでいるとあの番組の空気感が思い出され、非常に懐かしい気持ちになってきゅーんとしてしまった。
　本自体も、「この問題はヒント無しで犯人がわかったら何ポイント」など挑んで遊べる形式になっており、まあ私は全然解けなかったけれど、テレビ番組で出題されていたクイズなのだから本気でかかれば正解できる人もいるのだろうし、娯楽本として素晴らしい。もともと十分程度のクイズコーナーのためのミステリーなのでひとつひとつが短いところも、今の私の読書需要には合っていて、良い時間を過ごせた。

2015/12/14

イメージ参照(http://kentuku902.seesaa.net/article/387166739.html)