明治維新 同時代ライブラリー211

遠山茂樹(著者)

• 販売会社／発売会社: 岩波書店
• 発売年月日: 1995/01/17
• JAN: 9784002602110

商品レビュー

2017/01/24

１９９５年(底本１９５１年。ただし一部図表は７２年)刊。著者は横浜市立大学教授(元維新史料編纂局、元東京大学史料編纂所勤務)。◆古い書のため、例えば①幕末維新期の農民一揆・打ち壊しの急増を農民革命的に理解する、②明治維新を絶対王政の確立と見るか否か等、教条主義的な叙述は散見という問題あり。◆が、当時としては、可能な限りファクトを重視しようとする姿勢。経済・貿易面の明治維新期への影響を見る点(特に天保の改革から筆を起こすのは特異)。経済的差異から清朝(書かれないが朝鮮も含むか)との帰結の差を検討する視点。
なかんずく、先行研究に対する正しい引用とリスペクト(批判も割りに正しい方法で行われているのはリスペクトの現れ)、本書が先行研究のハブステーションとなっているのはやはり意義深いだろう。脚注の細かさが、本書の価値を雄弁に語っていよう。
◆補足。①廃仏棄釈→神道の末端政治機構への編入、幕府機構に連なる寺院権力への掣肘。②由利公正は幕末期朝廷の財政担当官。坂本龍馬が献策提示した相手。③英国駐日公使パークスが江戸無血開城を西郷に要請。日英両国に史料あり。◆地租改正の意味はもう少し見ておく必要がある。◆また本書の意味は、英雄史観になりがちだった幕末維新期の政治的な分析に、貿易・商業発展・農民のありようという別の光を当てたところにあるかもしれないなぁとの印象。