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消された眼 ハヤカワ・ノヴェルズ
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 早川書房/ |
発売年月日 | 1994/03/31 |
JAN | 9784152078384 |
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消された眼
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消された眼
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人間は、死の間際に何を視るのか。ベトナム帰還兵マイケル・ベッカーは、アジアの地で三人の娼婦を絞殺した。最初の女は殺人者の眼を凝視しながら死んだ。直後に悪夢を見るようになったベッカーは、それを逃れるために薬物を乱用した。次からは死人の眼を潰した。今は病理学者となっていた男は、勤め始...
人間は、死の間際に何を視るのか。ベトナム帰還兵マイケル・ベッカーは、アジアの地で三人の娼婦を絞殺した。最初の女は殺人者の眼を凝視しながら死んだ。直後に悪夢を見るようになったベッカーは、それを逃れるために薬物を乱用した。次からは死人の眼を潰した。今は病理学者となっていた男は、勤め始めた病院で障害を持つ子どもらを次々に殺した。ベッカーは死者の眼を恐れつつも、そこに言い知れぬ〝快楽〟を覚えた。 まもなくして、狂気の度合いは違うものの奇しくも知り合った最下層の舞台俳優ドルーズに〝交換殺人〟を持ち掛け、不仲だった妻を殺した。ベッカーのアリバイは完璧だったが、殺害の場に居合わせた妻の愛人にドルーズの顔を見られていた。しかし、不倫相手は自らの身を案じてか、警察に名乗り出ることはなかった。この愛人は誰なのか。これは、捜査陣には重要な足掛かりとなったが、殺人者にとっては早急に処理すべき不安材料となった。ベッカーは周到に準備したのち、共犯者ドルーズが憎む劇団の女優を殺して約束を果たす。二つの殺人に関連性は無く、殺害方法も異なっていたため、捜査は難航したが、警察は只ひとつの共通点に着目する。二人の被害者は、完全に両眼を潰されていたのだった。 サイコキラーとの対決を描いたサスペンス主体の警察小説で1991年発表作。 主人公はミネアポリス市警警部補ルーカス・ダウンポート。嗅覚鋭い敏腕だが、或るトラウマを抱えており、時に暴力への衝動を抑えきれない。この危うさが物語に陰影を付けている。ダウンポートには副業のゲーム制作で稼いだカネでポルシェを乗り回すという意外な一面もあるが、あくまでも枝葉に過ぎない。 刑事は、初期段階からベッカーが真犯人と直観するが、確たる証拠が掴めない。殺害現場にいた妻の愛人が最大の鍵を握っていたが、メディアを利用しても情報は得られず進展しない。痺れを切らしたダウンポートは、よりベッカーに接近することによって本性を曝こうとする。だが、その間にも証拠隠滅を図る殺人者によって、眼のない死体が増え続けていく。 全体的な印象としては個人的に愛読するリンジー/ヘイドンシリーズに近い。単独行動を好むタフな刑事と狡猾で残忍な殺人者を軸に置き、同時進行でその挙動を対比させつつ、犯罪の異常性を浮き彫りにしていく。磁場に引き寄せられるが如く、二人は互いの闇の深淵に触れようとする。この緊張感溢れる過程が巧い。 ベッカーは、利己主義者で薬物中毒者。そして、美貌のナルシストだった。執拗に身辺を嗅ぎ回るダウンポートを挑発し、一触即発の情況まで自らを追い詰める。本作は、一種の破滅型人間であるベッカーと、複雑な人格を持つダウンポートという二人の男を対峙させ、強烈なインパクトを与える暴力が絡み合い/炸裂し/崩壊するさまをしっかりと中心に据え、終盤へと向かうほどにボルテージを上げていくのである。 当然のことだが、ミステリは悪役が〝濃い〟ほど面白い。特に地味な捜査活動がメインとなるような警察小説では、犯罪者をどう造形するかで出来が変わる。安易に残酷な猟奇殺人を放り込めばいいのではなく、その異常性が真に迫り、主人公との対決が必然であるような展開も重要となる。リアリティを優先してつまらなくするよりも、ある程度のけれん味が効果を上げることを作者は押さえて創作している。 事件の鍵を握る愛人の正体は結末でようやく明らかとなるが、悪辣さでは殺人者を上回るという捻りも効いており、最近読んだ警察/サスペンスの中では印象に残る。
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