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ほんのちょっと、夜 リブロの童話
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | リブロポート/ |
発売年月日 | 1992/11/16 |
JAN | 9784845707775 |
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ほんのちょっと、夜
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ほんのちょっと、夜
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短編五編。どれも、日常生活のひとつ向こう側の世界、丁寧な描写で、とても素敵に楽しいファンタジーではあるんだけど、そのどれもが、ほんのちょっと、怖い。 安房直子や茂市久美子だったら、ふんわりと優しい、或いはじんとした情緒の読後感でまとめるところを、ひやりとしたひねり、大人向けの短編小説のようにエスプリのきいた、そのひとひねり、少しこころがひやっとするような味わいが効いている。 大昔に読んだことあるんだけど、読み直し。殆ど忘れていた。 「ほんのちょっと、夜」 表題作。夏の午後、ぼくが路地で友達とビー玉遊びをしているところにあらわれた、可愛い不思議な女の子。やたらと強くて、ぼくらのビー玉を次々をまきあげる。そして、勝ち逃げしようとする彼女が人差し指をくるりと回すと、世界が、ほんの少しの間、夜になる。不思議に思って後をつけると、その正体は、きらきら光るビー玉を集めている、カラスの子。 「あんたって、ほんとはなに?カラス?ネコ?」 と問われたとき、自分がほんとうに人間なのかどうか、突然「ほんと」がわからなくなってしまう、ぼく。この、ある日突然、確固とした日常やアイデンティティが失われる感覚が、ひやり、なのだ。 「十二色のつばさ」 これも、ブティックの飾り窓のモビールカモメに恋したハト、という、一見、メルヘンでファンタジックな設定なのだけど、さりげなく、ほんわか、とはとてもいえないざっくりした残酷な味わいを描いている。ハトが、つくりもののカモメのために自分の羽根をむしってくっつけてあげようとする痛ましさ、悪意のない店主のおばさんが、スチロール製のカモメをむしって、冬向けの雪かざりにしてしまおうとする残酷さ。ラストの、カモメの消失に、救済の可能性がほのかに描かれる。 「真夜中サーカスへおいで」 これは、唯一、シンプルに楽しいファンタジー。夜中に、飼い猫がしゃべりだし、まものサーカスに連れて行ってくれる。まものたちの、素敵なサーカス。ショウの演出の中で、エリのもらった「星かもめ」の羽根は、ガラスのコップに集めた月の光を素敵なシャーベットにしてくれる魔法の羽根。夜中の妖しい夢のうつくしさが、楽しい。 「二十年目のお客」 発展する町のはずれで、流行に後れ、さびれ、ひっそり閉店しようとする昔かたぎの丁寧な仕事をするオカダさんのフランス料理屋。昔世話をしてやったキツネが人間に化け、恩返しのようにお客になってきてくれる、ありがちなファンタジーを、ラストのどんでん返しが、ひやりと引き締める。 遠くから優しい眼差しでながめるような人間たちの暮らし、街の夕暮れの描写、丁寧に拵える、閉店の日のためのお料理の描写が、味わい深い。 「よろずやのねこ」 これは、まさに私の大好きな「怪盗クロネコ団」の前駆形である。ちょっとこずるくて、実はものすごく残酷なようで、こわい、だけど憎めないような、ひょうひょうとした独特のキャラクターの、猫。 うっかりすると、甘い話にのせられて、いかさまゲームで騙されて、永遠に猫の夢の中に閉じ込められてしまう、という物語設定も、クロネコ団そのもの。 何しろ、白日夢のように、日常から少し怖い夢幻の領域に滑り込んでゆくめくるめく情景描写が何とも魅惑的。ぽっかりと口を開けたよろずやの存続、「日常の、穴」の存在を読者に提示し、ぞくぞくするような日常崩壊の可能性を語るラストである。
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