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セミの自然誌 鳴き声に聞く種分化のドラマ 中公新書979
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セミの自然誌 鳴き声に聞く種分化のドラマ 中公新書979

中尾舜一(著者)

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セミの自然誌 鳴き声に聞く種分化のドラマ 中公新書979

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 中央公論社
発売年月日 1990/07/25
JAN 9784121009791

セミの自然誌

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2022/03/31

 近くにある金沢大学能登学舎に勤務していらっしゃる先生が「おもしろいよ」というので,お借りして読んでみた。この画像でも分かるとおり,ずいぶん昔の本。発行は1990年。あれ,そんなに昔じゃないか。それにしても,ちゃんとした画像は内のかな。  それはともあれ,確かに興味深い本だった。...

 近くにある金沢大学能登学舎に勤務していらっしゃる先生が「おもしろいよ」というので,お借りして読んでみた。この画像でも分かるとおり,ずいぶん昔の本。発行は1990年。あれ,そんなに昔じゃないか。それにしても,ちゃんとした画像は内のかな。  それはともあれ,確かに興味深い本だった。セミと言えば,小さなころ,虫取り編みを持って取りに行ったものだ。子どもでも取れるのは,ちゃんと鳴いてくれるからだ。そして,子どもながらに,自分の地域に住んでいるセミの,その鳴き声と体つきと名前は,しっかり頭に入ってくる。それほど,子どもに密着した昆虫だとも言えるだろう。同じように声を出してくれる鳥や,昆虫の仲間のバッタ類は,あまり名前を覚えられなかった。鳴き声は分かるのだが,成体を見つけることが難しいから。だって夜鳴くんだもの。  さて,本書のはじまりは,俳句や和歌から入る。芭蕉の有名な句は,人口に膾炙しているが,これほど多くの俳人/歌人たちが,セミを題材にして呼んできたことに驚くと同時に,ある意味子どもと同じ心を持っているのかなと思って,近しく感じたりする。  あとは,セミの学問の詳細な紹介だ。専門家だけではなく,アマチュアの研究者の成果もふんだんに取り入れて,本書をセミ学の入門書として成り立たせている。  例えば,セミの鳴き声については、こんなに詳しい。 ツクツクボウシ属四種は,種によって,耳で聞いた鳴き声も違うが,音響学的に明らかに違っている。こうした鳴き声の音響学的特性は,時間軸でも周波数軸でも,種によって明らかな違いがあり,種特異性を示している。だから,鳴き声が求愛の手段として有効なのである。(46ぺ)  セミの鳴き声が,雌を惹きつけるものであるだろうことは想像に難くないが,その声をちゃんとオシロスコープなどに聞かせて,研究するところがおもしろい。  こんな研究もある。 発生の季節が,年によってどれくらい変動するものかがよく分かる。変動幅は,アブラゼミの終鳴が最も小さく一四日で,最も大きいニイニイゼミの終鳴は,なんと三四日である。想像以上に,年による季節の進み方に遅速があるということである。(72ぺ)  これだって,素人的にも「今年はなかなかセミが鳴かないなあ」なんて感想を述べたりしているのだが,それをしっかり調べているあたりが,さすがである。表には,福岡県南部のある地域での,昭和46年~59年までの四種のセミの鳴き始め,鳴き終わりの日にちが一覧となって出ている。こんな研究,よくやるよなあ。これを見ると,鳴き始め(初鳴日というそうだ)の時期に一番ばらつきがあるのは,アブラゼミの26日である。年によっては,それくらいの幅があるわけだ。  このように,読者が全く知らないことではなく,なんとなく常識的に感じていたことに対して,科学的に解明してくれているのが本書の読みやすさに通じるのだろう。鳴き声の方言一覧も載っていて,これもおもしろい。別にセミが方言で鳴いているのではなく,人間の耳が方言なのであるのだが。なんのこっちゃ。  いい本を紹介して貰った。  そうそう,芭蕉が立石寺を訪れて読んだというあの有名な句。あそこに出てくるセミは,一体どんな種なのか,という分析もおもしろかった。芭蕉が訪れたのは太陽暦にすると7月13日。この頃山形で鳴いているセミとは…。  興味がある方は,図書館へでもいって,ぜひ手に取ってください。

Posted by ブクログ

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