商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 中央公論社 |
発売年月日 | 1987/04/10 |
JAN | 9784122014152 |
- 書籍
- 文庫
西洋学事始
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西洋学事始
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商品レビュー
3.7
3件のお客様レビュー
1.本書について 何度も読み返し、その度に感動を新たにした愛読書の一冊。 何せ取り扱われるテーマが斬新だった。 ヨーロッパ中世〜ルネサンスの歴史の本を読んで、時代精神の柱となっているその時代の人々の信憑がピンとこないことはないだろうか。 中世の人々は、我々現代人とは異なる感性、異...
1.本書について 何度も読み返し、その度に感動を新たにした愛読書の一冊。 何せ取り扱われるテーマが斬新だった。 ヨーロッパ中世〜ルネサンスの歴史の本を読んで、時代精神の柱となっているその時代の人々の信憑がピンとこないことはないだろうか。 中世の人々は、我々現代人とは異なる感性、異なる思考回路を持っていたのではないか、と思ってしまうのだ。 だが、それは、「異なる」の一言で、理解を拒絶する行為でもある。 我々現代人が「異なる」と感ずる文化的背景を本書は見事に解き明かし、彼らも我々と同じ思考回路を持った人間だった、という当たり前の事実を明確に教えてくれる。 理解を拒否するのではなく、理解する手掛かりを十分に与えてくれるのだ。 目次を見るだけで、ワクワク、ゾクゾクするではないか。 占星術/光学/紋章学/系譜学/古銭学/古文書学/カノン法/官房学/分類学/修辞学/言語学/図像学/美味学/心理学/詩学。 光学、古文書学、言語学、心理学が現代科学に通じることは分かる。 問題は、それらの横に、占星術、紋章学、美味学(!)、と言った、澁澤龍彦の得意とする、特異な分野が平然と並んでいるということだ。 この目次の配列からだけでも、占星術は迷信で、光学は科学だなどといった区分は無効化されていることが分かる。 占星術は天文学と変わらぬ「科学」であり、光学は神学と変わらぬ「信仰」であったのだ。 西洋中世史を読む上での参考書として、一家に一冊常備しておくべき本だ。 2.表紙について この文庫は大好きで、1987年に発売されると、何度も読んだ。 そして、表紙の絵も大好きだった。 淡いパステル画のような落ち着いた色調の西洋の街並み。 安野光雅の絵ではないかと、ずっと思っていた。 その色彩はいかにも安野っぽい。 だが、よく見て見ると、道行く人たちのファッションがおかしい。 彼らは、中世のヨーロッパ人の服装をしている。 そんな想像を交えた風景画を安野が描いたのを見たことがない。 更におかしなことは、折角の風景が大きな柱によって邪魔されていることだ。 何でこんなところに太い柱を描かなければならないのか? 最も奇妙なのは、道に置かれた首吊り台だ。 どうやらこれは安野光雅の作品ではない。 普通、表紙の見返しに、作者について触れているはずなのに、それもない。 作者が気になって仕方がない。 だが、記憶の中に、これと似た絵をどこかで見たことがあった、という感覚があった。 そして、アメリカに住んでいた頃、何度も通ったメトロポリタン美術館の分室、クロイスターズでのことではないか、という予感がした。 中世美術を専門に陳列するクロイスターズには、有名なトマス•ホーヴィングの「謎の十字架」がある。 それを見るために、せっせと通ったのだ。 そのクロイスターズにこれに似た絵があったような気がした。 この絵の構図からすると、大きな絵画の一部か、屏風画の一部のようだ。 クロイスターズには、有名な三連の祭壇画がある。「受胎告知」を描いたロベルト•カンピンの「メロードの祭壇画」だ。 だが、塔のある、石造りやハーフ•ティンバー様式の建物の並ぶ街は、「受胎告知」の時代にそぐわない。 webでクロイスターズのその祭壇画を調べてみる。 中央パネルには、赤い服を着て聖書を読むマリアの元に、天使ガブリエルがやってきた場面が描かれている。 だが、そこは古代ヘブライのベツレヘムではない。 その室内はどう見ても15世紀、ヨーロッパはフランドル地方の裕福な邸宅の室内だ。 問題は、右のパネルだ。 そこには室内で工作に勤しむマリアの夫ヨハネが描かれている。 そこでは窓が開かれており、そこから見えるフランドル地方の景色が、本書の表紙絵と一致するではないか! 決定的なのは、絞首刑台。 と、見えたのは、目の錯覚で、窓から突き出た板(何かを日当てる目的か)に置かれた小さな工作品が、表紙絵と全く一緒だった。 調べてみると、それは鼠取り器で、イエス捕縛の象徴だという。 こうして、ようやく表紙絵の謎が解けた。 これは安野光雅の水彩画ではなく、15世紀フランドルの画家、ロベルト•カンピンによる祭壇画の一部だったのだ。
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ヨーロッパの文化的背景についての基礎知識を得られる。ヨーロッパ文化を学ぼうとする者は必読じゃないかしら。面白い。
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神の認知と関わる光学や、分類の思想としての紋章学など、西洋の前近代の学問のことが書いてある。西洋の学問の底力を知ることができ、面白い。同じ著者のルネッサンスの歴史書も興味深く読んだ。
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