商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 立風書房 |
発売年月日 | 1986/07/20 |
JAN | 9784651700304 |
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父の履歴書
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父の履歴書
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20年以上前、月刊文芸春秋に掲載されていた著者の保阪氏の文章を読み その後保阪氏の著書に関心があったものの これまで読んでいなかったこともあり、 当時の文春で保阪氏が触れていた関東大震災に関する 著作がないかと探したところ「父の履歴書」という本の目次で 関東大震災という節があることを知り、この本を手にした。 文春掲載の文章には関東大震災当時、保阪氏のご尊父が横浜で 罹災したことが書かれており、私自身、神奈川県内で 生まれ育ったこともあり、 昨今の日本各地における頻々と発生する地震災害からも 案ずることが多いが、 ウィキペディアの関東大震災の項にもあるように 震源が神奈川県内(陸地か海かは未だ不明)であり 死傷者数では東京が上回るが建物の倒壊数では 神奈川が圧倒的に多かったという事実もあり、 震災当時の壮絶悲惨な状況を 少しでも知っておきたかった。 本書では保阪氏のご尊父が震災当時14歳で父(保阪氏の祖父)を亡くしたこと、 震災が起きる以前に母と兄弟姉妹の全てを次々と 結核で亡くされたことが書かれている。 震災当時14歳の少年だった父がその後、 どのような精神遍歴の中で生きてきたのか、 それを保阪氏が息子としての立場から実証的に 辿っていったということがこの本の大筋だった。 本を読み進むうちに保阪氏の祖父がどういう人物で あり、その影響や境遇を善くも悪くも親子として 受けざるを得なかった保阪氏のご尊父のことも書かれて おり、私は正直読んでよかったと感じた。 ご尊父が私と同じように父親の仕事の関係で 縁もゆかりもない土地である横浜に住みつき、 生活してきたことが私の境遇と同じであり、 時代こそ違うが祖父とご尊父の関係も、私の亡父と私の関係・境遇と 色々と共通する面があり、もっと早く読んでおいてもよかったと思った。 ご尊父のように私は少年時代に父を亡くした訳ではないが 祖父の生き方や性質というものが私の父とよく似ていたため、 自分と性格や生き方がどうも相容れないものがあるということで ご尊父の立場を私としては共感できた。 私も保阪氏ほどではなかったとしても生き方をめぐって 父とソリが合わない面も多々あったからだ。 ご尊父が父親の性格や生き方にネガティブさを感じながらも 震災によって14歳で生き別れとなり、その後戦争によって 自分の希望ある人生を蹂躙されながらも 懸命に自分を信じて生きてきたということを 保阪氏が冷静な筆致で書かれている。 自分と生き方や性質の違う父に対して 自分の中でどう折り合いを付けていくか 私の場合は母が生きていたため、その分 母が父に泣かされてきたことを傍で見ながら 私は育った。 しかしご尊父は震災以前のまだ幼い時に母上も兄弟姉妹も亡くされ たった一人で父親と相対していたがその父親さえも 震災により帰らぬ人となってしまった。 その後のご尊父の人生経験には並々ならぬものが あったことは 保阪氏の筆致でよく理解できた。 それは様々な面で恵まれた現代に生きる私にとって 既に両親を看取り、自分の死までの時間というものを 意識せざるを得なくなった私にとって、 今後自分自身とどう格闘していくかということにおいて 大変参考になる。 この本が出版された当時保阪氏は40代半ばであり、 ご尊父がガンを宣告されて余命いくばくもない状況になり、 亡くなるまでの2年近い歳月の中でご尊父の人生遍歴を 少しでも知っておくべきだと決断した。 あとがきにもあるように保阪氏は「本書は私の自分史である。(中略) 本書を、結核と関東大震災によって死亡した父の家族と、ただひとり 生きのこって孤独な人生をすごした父に捧げる」と語っている。 私が現在数え年で知命となりつつある時期にこの本と 出会えたことは、今後の人生を生きていく上でタイムリーだったと思う。 もう既に父を亡くして10年以上が経つ。 私が生れて以後の父の日記やメモと若い頃の写真等が あるにはあるが、 伯父伯母も既に亡くしているため亡父の若い頃のことを知る術がない。 更に父方の祖父も私が生れる前に亡くなっているので 祖父の生前の姿を知っているかなり年上の従兄姉たちに話を聞く他ない。 私の家系は保阪氏の先祖のように社会的に優れた人々ではないので 今から私が実証的に調査したとしてもさほど得られるものはないだろう。 しかし今後亡き両親の故郷にも出向いて 従兄姉たちからも話や資料を得られれば幸いである。又、自然科学に興味を持ってしまう私としては 保阪氏のご尊父が数学教師だったことから、 保阪氏が関心を持って著したルポルタージュ作品 「数学に魅せられた明治人の生涯」も今後読んでみたい。
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30年以上にわたり対立してきた頑固者の父の最期を前に、著者は過去を全く語らず、謎に包まれた父の人生を追って本籍の実家周辺へ。そこで過去帳を閲覧、全く驚くべき悲惨な前世があった。14歳の時に、関東大震災で家族全員を失い、一人残されたと聞いていたが・・・。そして父と伯母、祖父の人生が明らかに。父の許で著者は産まれて初めて父と心を開いて、父の過去をその口からも聞く。父との和解、ルーツ訪ねなど、自分という存在に流れる血を意識せざるをえない感動的なノンフィクションでした。
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