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言うなれば10周年記念(その1)
元々、非18禁の青年コミックだった『たとえば母が』シリーズ本編に対して何故に本作と『黒』には成年コミックの黄色マークが付いちゃったのかな~?と最初は思っていたのだが、少なくとも本作が主に同人誌を初出とする作品群によるものと知り、もしかしたら昨今の青年コミックを取り巻く環境はさらに...
元々、非18禁の青年コミックだった『たとえば母が』シリーズ本編に対して何故に本作と『黒』には成年コミックの黄色マークが付いちゃったのかな~?と最初は思っていたのだが、少なくとも本作が主に同人誌を初出とする作品群によるものと知り、もしかしたら昨今の青年コミックを取り巻く環境はさらに厳しくなったのか?といった心配が杞憂に終わって何よりである。むしろ、初連載から10周年という節目を率直にお祝い申し上げたい。 さて、その内容だが、まず全8編中の半分にあたる4編が本シリーズとは無関係な短編で肩透かしとなる。単行本が出される場合、6~8話くらいの中編に過去の短編が幾つか同時掲載されるようなことは少なくないのだが、ここまでのビッグネームで、しかも今後あるかないかというスペシャルとレアを感じさせるタイトルでこの手法を採用されるのはやや興醒めと言わねばなるまい。各作品が悪くないだけに『たとえば母が』の傘下ではない形で読みたかったところである。 そして、残りの4話については、無論、本編を補完する以上でも以下でもないのだが、例えばマコトとのお忍びデートだったり、榊の再調教を受けている最中だったり、そして、マサキとの愛を決定的に示すシーンだったりと、シリーズ本編においても分岐点となっている場面がチョイスされているため、ある種の懐かしさを伴いながら読むことができた。何より(好みは分かれるところだろうが)徹底的とも言える執拗さで描かれ続けるお尻での情交描写と、それで果てた後の「ダダ漏れ」あるいは「噴出」な感じは、元が同人誌だからこその筆致だと思う。 さらに特筆すべきは、2人の爛れながらも安寧な日々を描いた、まさしく「その後」のエピソードである。実際にはシリーズ本編の「最後の直前」にまつわる話ではあるのだが、交わり三昧な生活の中にも揺れ動く心情が挟み込まれており、思わぬIfを問われる場面などは読み手も悶々としてしまうであろう。許されぬ背徳と肉欲とがぶつかり合い、交錯する中にも揺れる愛情を描いてきた本シリーズの核となる部分がここでもきっちり滲み出ている。
DSK