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秋休み、あの砂丘で僕らは の商品レビュー

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2024/12/17

『第4回小さな今井大賞 受賞作品』 大学生になった主人公が、高校時代の記憶を回想する青春物語。敢えてカテゴライズすると、純文学よりも読みやすく、エンタメ小説よりも思慮深く哲学的。両者の良いとこどりをしたグラデーションに幅のある作品だと思う。 まず登場人物のバランスが良い。物事...

『第4回小さな今井大賞 受賞作品』 大学生になった主人公が、高校時代の記憶を回想する青春物語。敢えてカテゴライズすると、純文学よりも読みやすく、エンタメ小説よりも思慮深く哲学的。両者の良いとこどりをしたグラデーションに幅のある作品だと思う。 まず登場人物のバランスが良い。物事を俯瞰的に見る普通の主人公・福田。博識で話術に長けるセナ。盛り上げ役のカマヤツ。中でもセナのキャラ立ちがピカイチ。ディープな話題でもセナがいることで、キャンプの夜に火を囲んでしんみり話を聞いているような感覚で読むことができる。 作者の福本肇さんは言語化能力に長けた作家さんだと思う。恋愛、勉強、将来。多感な高校生の悩みから、生きるとは、死ぬとは、といった壮大なテーマにまで踏み込み、物事の本質を言語化されていることに凄みを感じる。文学的な表現が好きな私にはたまらない。 簡潔に言うと、「秋休みに鳥取砂丘に行って帰ってくるだけの物語」なのに感情を揺さぶられる。高校時代の青春がベースになっているので、読者の記憶や経験と結びつけて色んな光の当て方ができる奥行きのある作品だと思う。すべて描かれすぎていないことで得られる読後の余韻がとても好みだ。

Posted byブクログ