11ミリのふたつ星 の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
視能訓練士・野宮の社会人2年目の話。いやぁ、なんて凄いんだ野宮。皮肉ではなく、本当に凄い。偶然、子どもの斜視を発見し、周囲の誰もやったことのない訓練を自分でやりたいと思い、最後には成功させてしまうのだから。 実際は、本作のように眼の手術が成功し、万事上手くいくことがどれくらいの確率なのか分からないが、物語の中でくらいこんなハッピーエンドを迎えてもいいよね、と微笑んでしまうラストだった。 おっちょこちょいで残念イケメンと親族から呼ばれている野宮が、患者と一緒に成長していく姿も読んでいて晴れ晴れとした気持ちになる。特に、灯との交流の様子が印象に残った。灯はまだ3歳児だが、斜視を治すために辛い訓練をしなくてはならない。そんな中で、自分はまた病気しか見えていなかったと反省し、灯本人に目を向けた治療を始めるところが見事だった。 こんなに親身になってくれる眼科医がいると言うだけで、頑張れそうだ。 眼という臓器は、見えていれば大丈夫、とつい疎かにしがちだが、急に見えなくなる病気もある。見えていること自体が奇跡なのだと思う。
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Amazonの紹介より 「たった11ミリ。小指で押した先ほどの的を通して、人は世界を見ている」 不器用な青年・野宮恭一(のみやきょういち)は視能訓練士として着実に力をつけていた。ある日、野宮が喫茶店で出会ったのは、世界を立体的に見ることのできない四歳の少女・灯(あかり)だった。限...
Amazonの紹介より 「たった11ミリ。小指で押した先ほどの的を通して、人は世界を見ている」 不器用な青年・野宮恭一(のみやきょういち)は視能訓練士として着実に力をつけていた。ある日、野宮が喫茶店で出会ったのは、世界を立体的に見ることのできない四歳の少女・灯(あかり)だった。限られた時間の中で灯の訓練を重ねるうち、野宮はロービジョンの小学生や糖尿病網膜症の漫画家など、さまざまな悩みを抱えた人々に出会う。目に宿る奇跡に向き合い、野宮が見つけた答えとはーー。 「7.5グラムの奇跡」の続編で、より一段と成長している姿に応援したくなりました。 視能訓練士という職業を、このシリーズで知ることになったのですが、患者と医師との橋渡しとして、目に関する知識や判断力を駆使して、仕事を発揮している姿が印象的でした。成功と挫折を繰り返しながら成長する姿は、回を重ねるごとに頼もしく映りました。 全5話で、各話には様々な客がクリニックにやってきます。目の病気といっても、知らないことだらけでした。こんな症状もあるんだと思いましたし、意外と深刻な病気もあって、目に対するケアも必要だと思い知らされました。 ちょっとのことで疑いをもつ主人公・野宮。少しでも病気を改善しようと患者に寄り添ってくれる野宮は優しい雰囲気を醸し出していましたし、のほほんとしながらも芯がしっかりとしている印象でもありました。 技術としてはまだまだかもしれませんが、患者と真剣に向き合い、真剣に考える姿にじんわりと感動が込みあがってきました。 言葉のチョイスも印象的でした。 題名の「11ミリのふたつ星」もそうですが、 「前口径約24ミリ、重量約7.5グラム、容積約6.5ミリリットルの中に宿る光」 この文章も、論理的に表現されているのですが、美しい表現にも見えて、良い意味で心に引っかかりました。 砥上さんの別作品「線は、僕を描く」もそうでしたが、言葉のチョイスが素晴らしいなと思いました。 あまり知らなかった「視覚」の世界を覗けましたし、「目」を通しての交流が次第に温かくなっていく描写にじんわりと感動が滲み出てきて、良い余韻に浸れた作品でした。
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新米の視能訓練士、野宮恭一を主人公とした連作長篇。『7.5グラムの奇跡』の続篇だが、前作を読んでいなくても(たぶん)大丈夫。もちろん読んでいた方がより楽しめるのは間違いない。 収録された5篇は独立した物語だがそれぞれ繋がりがあり、最初に登場する少女がキーパーソンとなっている。不器...
新米の視能訓練士、野宮恭一を主人公とした連作長篇。『7.5グラムの奇跡』の続篇だが、前作を読んでいなくても(たぶん)大丈夫。もちろん読んでいた方がより楽しめるのは間違いない。 収録された5篇は独立した物語だがそれぞれ繋がりがあり、最初に登場する少女がキーパーソンとなっている。不器用な野宮くんが視能訓練士としても、人としても成長していく姿が素晴らしかった。 ただ、偶然に頼りすぎている気がしなくもなかった。章ごとに新たに登場する人物がことごとく目に問題があり、それを野宮くんが逸早く気づくという設定は安易すぎないか。まあ、その違和感を封じるほどの感動をもたらしてくれたのは確かだが、それゆえに惜しいなと思った。 刊行日12/18、NetGalleyにて読了。
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「7.5グラムの奇跡 」の続編。 本作も序盤からぐいぐい引き込まれ、濃い内容にいつの間にか没入。 何人もの人生の、長い物語を読み終えたような気分。 読後は心地よい疲労感に包まれました。 視能訓練士・野宮くんの患者に向き合う姿とその成長ぶりから目が離せない。 不器用な彼の実直さや...
「7.5グラムの奇跡 」の続編。 本作も序盤からぐいぐい引き込まれ、濃い内容にいつの間にか没入。 何人もの人生の、長い物語を読み終えたような気分。 読後は心地よい疲労感に包まれました。 視能訓練士・野宮くんの患者に向き合う姿とその成長ぶりから目が離せない。 不器用な彼の実直さや、仕事にも人にも誠実で優しいところを、頼もしく好ましく感じました。 視能訓練士さんのお仕事って、こんなにも人を救っているんですね。 訓練をされる側の人として読んでいました。 誰かを救う、ほんの少しの工夫や言葉。 そこに辿り着くまでの苦しい日々を想像し、今まで出来なかったことが出来るようになった喜びに目頭が熱くなりました。 気持ちに寄り添ってくれる大人の存在は、子どもにとっても親にとっても本当にありがたい存在で、その存在に励まされる。 あるシーンでは人の優しさに触れ、今まで張りつめていた気持ちが弛んで涙があふれた
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