猫の耳に甘い唄を の商品レビュー
感想 ミステリーとは。犯人=作者との戦い。だが戯れでもある。そんな本質を表現した一冊。髭の名探偵も、凄腕の怪盗もいない。それが微笑ましい。
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『この小説には〈犯人の書いた文書〉が登場する』が、『犯人はある重大な事実を隠匿しつつ その文章を書いている』 意味ありげな挑戦状めいたものが冒頭に添えられて、物語は幕を開けます。 新人賞の佳作に引っ掛かって以来、十五年ほどミステリー作家として活動している売れない覆面作家...
『この小説には〈犯人の書いた文書〉が登場する』が、『犯人はある重大な事実を隠匿しつつ その文章を書いている』 意味ありげな挑戦状めいたものが冒頭に添えられて、物語は幕を開けます。 新人賞の佳作に引っ掛かって以来、十五年ほどミステリー作家として活動している売れない覆面作家の冷泉彰成は、ひょんなことから受け入れることになった作家志望者の弟子を従えて、作家生活を過ごしている。そんな売れない作家のもとに届いた二通のファンレター。一通目は冷泉にとって嬉しいものだったが、二通目は彼の作品を誤読しているとしか思えないほどの怪文書だった。 というのが、物語の導入で、この二通のファンレターを切っ掛けに、冷泉は殺人事件に巻き込まれていくわけですが、〈犯人の書いた文書〉や〈重大な事実の隠匿〉に仕掛けられた驚きが畳みかけるように、次から次へとやってくる後半が圧巻で、〈隠匿〉であるものと同時に、〈犯人〉が隠しきれなかったものまで明らかになってくる展開は秀逸です。ラストは当事者は必死なんでしょうけど、思わず笑っちゃう、とても楽しいミステリでした。
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