「ふつう」の私たちが、誰かの人権を奪うとき の商品レビュー
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人権を守る立場でありながら実効的な力を持てない調査官の視点で語られる事例たち。 特に印象に残るのは「人権感受性」と「人類の枠だけではない人権」への考察。 前者は、例えば自分以外の他者の共通言語が「手話」だった場合。 常識となるマジョリティが逆転することでそこで配慮される人権の形が変わるような表現がありました。 要はそこの感受性の向上も必要だという課題提起。 後者は人種、男女、ジェンダーなど様々な壁を越えてきた(越えつつある)人権という意識。 作者が感じた飼い猫への憐憫、他方映画撮影での動物虐待。 家族パートナーと同じくらい大切にされる命がある一方、何の意味もなく使い捨てるかのように消費される動物たち。 人類だけが人権を叫ぶ時代からさらに声なき者たちの「人権」もすくい上げることが求められているという示唆はとても共感できるものでした。 他のエピソードでももどかしさ、やるせなさ、焦燥感や無力感などはよく伝わりました。 学者やお偉方の視点でなく時折入る一般市民的な描写が読者の視点に近づけてくれています。 ただ基本的には韓国の話なので組織や制度の面でピンと来ない部分もありますがそれはやむ無しですね。
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